抄録
本研究では,我々のグループで2012年8月より継続している上信越山岳域での高密度な連続気象観測データを用いて,2013年10月9日に日本海側で発生したフェーン事例における山岳斜面に沿った地上気象場の特徴を調査した.10月9日日中における地上の擬似的な温位場は,新潟県上中越地方から長野県北部にかけて高いが関東平野では相対的に低く,上信越山岳域に大きな水平勾配がある.地上風は南寄りの風で日本海側ではおおよそ山岳斜面を流下する風向となっており,新潟・長野北部では風下斜面の下降風に伴う断熱昇温が示唆される.魚野川–利根川谷筋と千曲川–碓氷川谷筋の2つの測線に沿った地上温位分布を見ると,魚野川谷筋では日中12~16時にかけて高温位域が標高400 m以下に広がり,同時に南寄りのやや強い風が見られる.千曲川谷筋では同等の高温位域が標高900 m以上まで広がり,斜面上はほぼ等温位となっている.これらの結果からも,長野県北部から新潟県にかけて斜面下降風による影響が強いことが示唆される.