日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P005
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発表要旨
関東平野における夏季日中の局地風系出現型と気温分布との関係
*瀬戸 芳一高橋 日出男
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抄録

1. はじめに
  関東平野においては,夏季の一般風の弱い日に起こる猛暑の経年増加が顕著であり(藤部,1998),局地風系と地衡風型の出現頻度の経年変化が指摘されている(Fujibe,2003).報告者らは,北関東の高温増加に関連し,熊谷と東京との日最高気温差が大きい場合に東風成分の弱い風系が現れやすく,夏季晴天日に占めるこのような日の割合の増加傾向を報告した(2013年度春季大会S1104).これらの風系変化は猛暑の増加とも関わっている可能性があり,詳細な解析が必要である.本研究では,風系構造を把握する指標として地上風の収束・発散場を用い,総観場の気圧傾度との関係や経年変化の観点から,関東平野における局地風系の特徴と気温分布を明らかにすることを目的とする.
2. 資料と解析方法
  気象庁によるアメダス観測資料に加えて,海上保安庁の沿岸海上気象データ,各都県による大気汚染常時監視測定局のデータもあわせて利用した.解析期間は1979年から2011年(33年間)の7,8月とし,地衡風速6 m/s以下かつ関東地方平野部の気象官署の60%以上で日照8時間以上,日降水量1 mm未満の日を晴天弱風日として抽出した(369日).
  周辺の土地利用から推定した地表面粗度により高度50 m風速に統一した地上風を,約8 km間隔の格子点に内挿し,平面近似法を用いて平滑化した収束・発散量を求め,晴天弱風日における毎時(9時~17時)の収束・発散量(標高200 m以下の格子点)に対し,主成分分析を行った.
3. 結果
  各主成分の寄与率は,第1主成分が13.4%,第2主成分が11.2%,第3主成分が7.5%となった.各主成分の負荷量分布および主成分得点の日変化は,海風や谷風に対応して東京湾や北関東にみられる発散域など,晴天弱風日に特徴的な収束・発散場とそれぞれよく対応していた.これらの主成分得点の日変化が似た日には,収束・発散量の変化パターンおよび局地風系や一般場の風が類似した日変化をすると考えられる.そこで,各対象日における第1~第3主成分の毎時の主成分得点に対してクラスター分析を適用し,A~Eの5カテゴリに晴天弱風日を分類した.分類した各事例は,一般場の気圧傾度との関係が認められ,AとBは東よりの風,CとEは南よりの風,Dは典型的な海風が卓越する地上風系となっていた.また,Aは全域で低温傾向となる一方,Cはほぼ全域で,Eは鹿島灘沿岸で高温傾向となるなど,気温分布にもそれぞれ特徴がみられた.C,D,Eの出現頻度には経年的な変化があり,関東平野における風系の経年変化傾向が示唆される.
  今後,各カテゴリの風系および気温分布について詳しく検討し,局地風系の経年変化について,総観場の変化との関係を含めて検討していく予定である.

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