日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P011
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発表要旨
谷川岳一の倉沢中流域堆積物中の飯綱上樽テフラとその時期の地形形成環境
*平塚 延幸
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抄録
 谷川岳一の倉沢中流域(一の沢出合周辺から旧道出合)には、堆積物の露頭が存在し、その岩相からⅠ・Ⅱ・Ⅲ期に大別出来る。Ⅱ期堆積物は蛇紋岩巨礫を含む陶太の悪い砂質基質の層で、これは小疇(2002)が指摘するモレーンに相当すると考えられる。Ⅰ期層はその下部に位置する。中流域のⅠ期層を調査した結果、ここから飯綱上樽テフラが見いだされた。
 Ⅰ期層E7礫層内のラミナ、C5のパミスと礫層内のラミナ数カ所の粘土砂質を採取洗浄し顕眼したところ、斜方輝石・角閃石・磁鉄鉱・チタン磁鉄鉱等の結晶が見いだされた。そこで4箇所(C5パミス・C5F1・E7B2・E7D下)のテフラ同定を、「株式会社 古澤地質」に依頼した結果、鉱物組成・斜方輝石と緑色角閃石の屈折率(C5・ハ゜ミスの斜方輝石1.710-1.714角閃石0.675-1.681、E7・B2の斜方輝石1.707-1.714角閃石1.677-1.683等)から、飯綱上樽テフラ(Iz-Kta)との鑑定を得た。ここれらから一の倉沢中流部C5・E7堆積物Ⅰ期層形成年代は約13万年頃以前、上部のⅡ期層はこれ以降に形成したこととなる。
 これらⅡ期層の堆積物を検討した結果、13万年前頃の地形形成環境は次の様にまとめられる。(1)Iz-Kta降灰前…①上越国境稜線では蛇紋岩礫岩屑生産はあったが寒冷によるコンクリート化により運搬が抑制されていた。山体中央部の花崗岩輝緑岩帯は凍結破壊作用が活発で、それら岩屑は谷筋を埋める雪渓を介して中流部に運搬された。②一の倉本谷中流域石英閃緑岩帯の多くは雪渓下にあった。③一の倉尾根南斜面の石英閃緑岩帯ではシーティング作用と凍結破壊作用により岩屑生産が活発であた。④本谷上部および一の倉尾根のアバランチシュートはこの時期に原型が作られた。アバランチシュート中心部では雪ブロック等による研磨作用が卓越した。⑤谷川岳東面一の倉沢では13万年前頃は現環境より寒冷な環境に置かれ、雪渓の様相も現在とは違ったものであった。(2)Iz-Kta降灰後…温暖化した。雪崩などの運搬作用や、岩屑が移動が弱まった。なおⅡ期堆積物はⅠ期堆積物と岩相が異なり、地形形成営力の解明には詳しい調査が必要である。 
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