抄録
近年,身近な生活空間を映し出す「日常的景観」への関心が高まるにつれ,景観政策における住民参加の必要性が強調されている。しかしながら,身近な景観で あるほど,住民の間ではその存在や価値が意識化されていることは少なく,それゆえに,いくら制度や施策の上で住民主体の景観づくりが唱えられようとも,実 際に一個人が自発的な行動を起こすことはきわめて限られている。まずは,住民自身が自らの土地の景観について学んだり,その価値を再認識したりする「気づ き」の機会を得ることが身近な景観を育むための第一歩といえよう。そこで本研究では,身近な景観を顕在化する手段の1つとしてフットパスに注目し,これを 活用した景観教育・啓蒙の取り組みが,景観保全に対する人々の意識の涵養にいかに貢献しうるのかを検討してみたい。