主催: 公益社団法人 日本地理学会
熱帯アジアには「hill stations」とよばれる高原避暑地がある。これは植民地時代のヨーロッパ人のアジア進出によって形成されたものである。
本稿では、hill stationsの一つであるマレーシアのCameron Highlandsをとりあげる。 Cameron Highlandsはいわゆるマレー半島の中央山脈に位置し、標高1,000-1500mに集落が展開している。 こんにち、Cameron Highlandsは、リゾートとして機能だけではなく、西マレーシアではもっとも重要な温帯蔬菜と花卉の栽培地域になっている。 Cameron Highlandsは1926年にhill stationsとしての開発がはじまったが、すぐに農業試験場。気象観測所が開かれた。1940年頃には数件のホテル、20をこえるバンガロー(大型の別荘)、それにゴルフ場があった。 第二次世界大戦後、マレーシアの経済発展により1980年代からはリゾートとして国民化され、西マレーシアでは重要な観光地になっている。
一方、hill stationsとしての開発の当初から、バンガローに雇われていた華僑によって、中国から種子が持ち込まれて蔬菜栽培もはじまった。 こんにち、この高原では30種を越える種類の温帯蔬菜を栽培されているが、ハクサイ、キャベツ、トマトが三大蔬菜である。それはマレーシアのどの民族もそれらを消費するからである。しかし、それらの種子の多くは日本をはじめ、韓国・台湾・アメリカなどから輸入されている。
現在、Cameron Highlandsで生産される蔬菜の80%はクアラ=ルンプルをはじめ西マレーシアの各都市に移出されている。またその20%はシンガポールに輸出される。
Cameron Highlandsの蔬菜栽培や花卉栽培農家では、1992年から外国人労働力の雇用が可能になった。2013年3月現在、約13,000の外国人労働者が農業に従事している。外国人労働者なしに、この高原の農業は維持できなくなっている。