日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P022
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発表要旨
衛星データ(LANDSAT,ASTER,ALOS)合成空中写真による土地被覆分類図の精度評価
*黒田 圭介黒木 貴一磯 望宗 建郎後藤 健介
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抄録
Ⅰ.はじめに
地理情報システム(GIS)の普及により,デジタル化した空中写真を人工衛星データと同じ取り扱いで最尤法により半自動的に分類項目ごとに分類し,土地被覆分類図を作成することは容易になってきた。この空中写真に人工衛星データの近赤外域の波長帯データ画像をGISで合成した画像を用いて最尤法分類すると,高解像度で誤分類の少ない分類図が作成できる(例えば黒田ほか,2013) 1)。しかし,数ある人工衛星データのどれを合成するのが適当か検討した研究は少ない。地理学的な解析がパソコン上で行われることが多くなった今日において,デジタル化空中写真の利活用方法について検討することは有意義であると考えられる。そこで本研究では,空中写真に合成する人工衛星データ選択への一助となるよう,空中写真と人工衛星データの組み合わせの検討を行い,分類精度評価を行った。本研究では,LANDSAT/MSS,LANDSAT/ETM,ASTER/VNIR,ALOS/AVNIR-2の近赤外域データを空中写真に合成し,それぞれについて分類精度の計算を行った。
Ⅱ.研究方法
解析に用いたGISソフトは,ArcView9.2である。最尤法分類は,ArcView9.2のエクステンション,Spatial Analysisの「最尤法分類」で行った。分類精度は,最尤法分類に使用しなかったポリゴン形式の教師データを重ねあわせ,その教師データ内の分類結果面積をGISで抽出することで評価した。本研究で精度評価に使用した人工衛星データは以下の通りである。なお,研究対象地域としたのは,熊本市白川流域,宮崎県大淀川流域,大分県大分川流域,そして福岡県福岡市東部である。 1)LANDSAT/MSSについては,1978年観測の白川流域を対象とし,近赤外域相当のBAND7を1975年撮影の空中写真に合成した。2)LANDSAT/ETMについては,2004年観測の大淀川流域を対象とし,近赤外域相当のBAND4を2005年撮影の空中写真に合成した。3) ASTER/VNIRについては,2007年観測の大分川流域を対象とし,近赤外域相当のBAND3を2007年撮影の空中写真に合成した。4) ALOS/AVNIR-2については,2008年観測の白川を対象とし,近赤外域相当のBAND4を2007年撮影の空中写真に合成した。
Ⅲ.分類精度
表1に,平均分類精度を,図1に土地被覆分類図の例として,福岡市東部の土地被覆分類図を示す。分類項目は,水域,市街地(宅地や道路),草地(水田含む),裸地(畑含む),樹林地である。ただし,白川はこれに竹林が加わり,福岡市東部は竹林が加わり,市街地については住宅地と道路,樹林地は針葉樹林と広葉樹林に分けて分類した。  白川を見てみると,LANDSAT/MSSを合成したものは11.1%,ALOS/AVNIR-2では5.3%,大淀川では,LANDSAT/ETMを合成したものは+14.2%,大分川では,ASTER/VNIRを合成したものは+7.4%,福岡市東部ではLANDSAT/ETMを合成したものでは+5%の精度向上が見られた。また,福岡市東部の土地被覆分類図を見てみると(図1),草地が水域に誤分類される例が多く見られたが,LANDSAT/ETMを合成することにより,その誤分類がほぼ解消された。白川,大淀川,大分川においても,水域の誤分類が多く解消された。水域は可視域より波長の長い近赤外域では反射率がほぼ0になるため,教師データとして取得した地点の水域の画素クラスの分布パターンが他の分類項目のそれと明瞭に異なる。よって,人工衛星データをコンポジットした空中写真で最尤法分類を行うことにより,水域の他の分類項目への誤分類が少なくなると考えられる。LANDSATは解像度が高くない(MSSは解像度83m,ETMは同33m)が,ALOS/AVNIR-2(同10m),ASTE/VNIR(同15m)と比べて遜色のなく精度向上に寄与している。LANDSATは多くのデータが無償で入手できるため,今後利活用が期待できる。
参考文献:1) 黒田圭介ほか(2013):ALOS近赤外域(BAND4)画像合成空中写真を用いた土地被覆分類-2012年九州北部豪雨による白川浸水範囲を例に.2013年秋季学術大会日本地理学会発表要旨集,84,p129.  
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