日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 707
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発表要旨
オブジェクトベース画像解析による都市域の土地被覆分類
東京都世田谷区を対象に
*山本 遼介泉 岳樹松山 洋
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抄録

1 はじめに
リモートセンシングによる土地被覆の解析に用いられる衛星画像や航空写真は,近年高解像度化が進んでいる.これにより従来のピクセルベースの解析では,対象物の各部分が断片的に判別され,微小な領域が大量発生することが問題となってきた. 
そこで近年注目されているのが,オブジェクトベース画像解析という手法である.この手法では,あらかじめ性質の近い近隣のピクセルを1つのオブジェクトとして結合(セグメンテーション)し,これを単位として解析を行う.これにより微小な領域の発生を回避し,より目視判読に近い分類が可能になるとされる. 
オブジェクトベース画像解析については,国内の都市域を対象とした解析事例は少ない.また空間解像度数m程度の衛星画像を用いたものは多いが,より高解像度の航空写真を用いた事例は少なく,その特徴は明らかでない.本研究は,高解像度の航空写真を用いて土地被覆分類を行い,ピクセルベースとオブジェクトベースの違いを明らかにすることを目的とする.

対象地域と使用データ
対象地域は,多様な土地被覆が存在する東京都世田谷区を選んだ.使用データは,空間解像度25cmのデジタル航空写真(2003年撮影)である.この画像は,赤,緑,青,近赤外の4レイヤーを持ち,ここから正規化植生指標(NDVI)を算出して5レイヤーとして解析を行った.

研究手法
まず検証のため,1:烏山地区,2:三軒茶屋地区,3:喜多見・成城地区,4:二子玉川地区の4地区を選び, 500m×500mの検証領域を設定した.この領域でピクセルベースとオブジェクトベースのそれぞれで土地被覆分類を行った.分類は教師付き分類とし,検証領域を除く各地区の図郭内で70個ずつのサンプルを取得して行った.最後に4地区のサンプルを合計し,これを用いて世田谷区全域で分類を行った.

結果
分類結果からは,ピクセルベースでは建物と樹林の混同が少なく,オブジェクトベースでは裸地および水域の誤分類が少ないという傾向の違いが見られた.
次に,検証領域で目視判読によりトゥルースデータを作成し,これと比較して分類精度の算出を行った.分類精度は,全体精度が60~70%程度となり,いずれの地区でもオブジェクトベースの方がピクセルベースより有意に精度が高かった.
また,空間的自己相関指標の1つであるJoin統計量を求めた結果,オブジェクトベースの方がより強い集積傾向を示した.よって,微小領域の大量発生という問題がオブジェクトベースでは改善することが定量的に示された.

 5 考察
世田谷区全域での分類結果から,緑地の指標である緑被率およびみどり率を算出し,2001年と2006年の世田谷区による調査結果と比較した.本研究で算出した指標は妥当な値であり,緑被率はオブジェクトベースの方が区の調査に近い値となった.
またオブジェクトベースは,1つ1つのオブジェクトを形を持ったポリゴンとして出力できる点も特長である.これを活かし,GISを用いた緑地解析を試みた.その結果,緑地を量だけでなく規模の面からも把握することができた.

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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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