日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 529
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発表要旨
日本アルプスにおける2013年越年性雪渓分布と動態
*朝日 克彦
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抄録

1.はじめに 気候変動下におけるわが国の山岳域の環境動態はいまだよくわかっていない.世界的には山岳氷河の変動が気候変動の指標として広く用いられている.典型的な氷河が存在しない日本アルプスにおいて,代替指標として越年性雪渓の動態を明らかにしたい.その端緒として,2013年秋の越年性雪渓の分布を明らかにし,過去の分布と比較した.   2.研究方法 2013年の分布:2013年10月7日および14日に航空機から北アルプス全域および南アルプス北部山域について,手持ちカメラで斜め撮り写真を撮影し,この写真判読を行った. 過去の分布:同じ山域が撮影されている空中写真は国土地理院,1976/77年,1:15000カラー空中写真である.この写真の実体視判読を行った.このほか,撮影範囲は限定されるが,林野庁1969年(白黒)および2009年(カラー)空中写真も併用した.   3.結果 分布の概要:総数の約7割は東斜面に分布し,冬季の卓越風向に対して風下にあたる.雪渓の末端高度に着目すると顕著な北下がりになる.これらのことから,秋季の越年性雪渓の分布においても,その規定要因は積雪量にあると推定できる. 2013年の分布 分布は北アルプスでは犬ヶ岳から乗鞍岳,南アルプスでは北岳に,合計576ヶ所,総面積3.66 km2.通例では秋季まで雪渓が残らない山域においても多数の雪渓が越年した.末端標高が最も低い雪渓は犬ヶ岳雪渓,1070m.最大の雪渓は不帰沢雪渓(唐松岳),0.184 km2. 1976/77年の分布 北緯36度40分以北は1976年,以南は1977年に撮影された空中写真によると,北アルプス全域では264ヶ所,総面積2.54 km2.南アルプスには越年性雪渓は存在しない. 剱岳周辺の経年比較 剱岳周辺において越年性雪渓の面積は,1969年は0.78 km2,1977年は0.80 km2,2009年は57.7 km2,2013年は84.1 km2であった.規模の大きな雪渓,例えば小窓雪渓,三ノ窓雪渓などでは,規模や形態の年々変化は必ずしも大きくなく,小規模な雪渓の残存・消失が総面積変化に効いている.

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