日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 801
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発表要旨
都道府県別高齢者夏季死亡率と気温との関係
*北島 晴美
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キーワード: 死亡率, 高齢者, 気温, 都道府県
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抄録
1.はじめに<BR>
 高齢化が進行し高齢者の死亡比率は経年的に上昇している。2010年の65歳以上死亡は全死亡数の85%,75歳以上死亡は69%となり,高齢者の死亡状況が全死亡の状況を左右するといっても過言ではない。死亡率の季節変化は,1950年代以降夏季のピークが消失し,冬季に高く夏季に低い傾向が見られる。4大死因のうち悪性新生物以外は,冬季に死亡数が増加し,低温が死亡に影響している。<BR>
 一方,1990年代以降,顕著な高温年が出現しているが, 2010年夏季は特に高温となった(8月の日本の月平均気温偏差1.97℃,正偏差第1位,気象庁)。地球温暖化が進行すれば今後も夏季の異常高温が頻出する可能性があり,人間の健康への影響が懸念される。<BR>
 本研究では,夏季の気温と死亡率について,最近の変動傾向を調べ,気候が死亡にどの程度関連するのか明らかにすることを目的とする。<BR>
 発表者らは,2010年夏季と2009年夏季の60歳以上死亡率の差から都道府県別の特徴を検討した(北島・太田,2011)。60歳以上一括死亡率は人口構成の影響を受けるため,今回は,高齢者の年齢階級別夏季死亡率について,気温との相関関係を分析した。<BR>
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2.研究方法<BR>
 使用した死亡数データは,平成21年(2009),22年(2010),人口動態統計(確定数)(厚生労働省)である。北島・太田(2011)と同様に,各月死亡率は,1日当り,人口10万人対として算出した。死亡数が多く死亡率が安定する75~84歳,85~94歳年齢階級を対象とした。人口は2010年国勢調査人口(日本人人口)(総務省統計局)を使用した。<BR>
 都道府県庁所在地の気象観測地点における月平均気温を,各都道府県の気温として使用した(気象庁ホームページからダウンロード)。<BR>
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3.都道府県別2009年・2010年8月気温<BR>
 都道府県毎の8月気温平年値と2009年8月・2010年8月の月平均気温との散布図を図1に示す。2009年8月の日本の月平均気温偏差は-0.77℃であり,平年より低温な月であった。高知県,福岡県以外の九州,沖縄県のみが平年値よりも高温であった。一方,2010年8月は,全都道府県で平年値よりも高温となった。<BR>
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4.都道府県別気温と高齢者死亡率<BR>
 図2に2009年8月と2010年8月の都道府県別気温と85~94歳死亡率との散布図を示す。85~94歳死亡率と気温との相関係数は,2009年8月 r=-0.170 p=0.253,2010年8月r=-0.505 p=0.000,同様に75~84歳死亡率と気温との相関係数は,2009年8月 r=0.001 p=0.996,2010年8月r=-0.327 p=0.025である。低温傾向であった2009年8月の死亡率と気温には相関関係がないが,高温となった2010年8月の85~94歳死亡率,75~84歳死亡率は,いずれも気温と有意な(有意水準0.1%,5%)負相関がある。<BR>
 相対的に低温な地域で,2010年8月気温の平年差が大きい傾向があり(図1),高齢者死亡率も顕著に上昇した(図2)。<BR>
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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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