日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 211
会議情報

発表要旨
郊外の選定方法の違いがヒートアイランド強度に与える影響
*中村 祐輔重田 祥範
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ヒートアイランド現象は,都市構造のほかその周辺における土地被覆や,海陸風循環などの影響を強く受ける.そのため,これまでに様々なヒートアイランド分布が各都市で報告されている.ヒートアイランドの発生頻度や強さを定量的に評価する指標として,ヒートアイランド強度がよく用いられている.しかしながら郊外の選定方法で,その値は大きく異なるとの指摘もある.そこで本研究では,50年ほど前からヒートアイランド現象の存在が報告されている埼玉県熊谷市を対象に,定点型の気温観測をおこなった.そのうえで,郊外の選定方法の違いがHIIに与える影響について検討した.
観測は2013年8月から実施しており,本研究では8月に得られたデータを解析に使用する.その結果,日最高気温時では観測領域北東部に明瞭な低温域が認められ,周囲よりも1.0℃以上低い値が示された.一方,日最低気温時には北東部の低温域が不明瞭となるが,観測領域南部に明瞭な低温域が認められ,周囲よりも1.5℃以上低い値が示された.低温域が発生した北東部と南部では,土地被覆が大きく異なっており,それが原因となって低温域発生の時刻に差が生じたものと考えられる.
そこで,低温域が認められた北東部,南部を郊外とした場合のヒートアイランド強度について検討をおこなった.その結果,北東部を郊外とした場合のヒートアイランド強度は日中に最大値が示されるが,南部を郊外とした場合では夜間に最大値が示された.このように,郊外の選定方法によって,ヒートアイランド強度の時間変化に大きな差が生じることが明らかとなった.

著者関連情報
© 2014 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top