日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 710
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発表要旨
思考力・判断力・表現力を育成する中学校社会科地理的分野の学習指導の在り方
ESDの視点を取り入れることを通して
*池下 誠
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抄録
平成20年に改訂された中学校の学習指導要領には、基礎・基本の徹底、言語力育成の観点から、「習得」「活用」「探究」が重視されるようになった。さらに、平成22年には指導要録が改訂され、「習得」(基礎的・基本的な知識・技能の習得)は、観点「知識・理解」と「技能」に、「活用」(知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力)は「思考・判断・表現」に、「学習意欲」は観点「関心・意欲・態度」に対応することになった。 卒業後に高校受験を控えた中学校では、観点別学習状況の評価観が受験の際の重要な資料として使われるため、学期ごとに観点別学習状況の評価観に基づいて評価を行うことは当然のこととされている。しかし、個々の生徒の学習状況をどう評価したらよいか、といったことやそれを学力の向上にどう結びつけるか、といったことについては十分に理解されているとはいえない。その上、平成22年度に、「資料活用の技能・表現」が「資料活用の技能」に、「思考・判断」が「思考・判断・表現」に変更された。学校現場では、それがどういったいきさつで変わったのか、またそれをどう評価したらよいか、といったことが十分に理解されないまま、実際の評価が行われているのが現状である。 筆者は、2013年日本社会科教育学会で、「観点別学習状況の評価観に基づき生徒の学力を高める学習指導の在り方-目標・指導・評価の一体化を図ることを通して-」という主題で、ワークシートを活用した個に応じた指導と形成的評価の一体化を図る指導を継続的に行うことによって、生徒の学力が高められることを述べた。しかし、思考力・判断力・表現力をどう育成するのか、ということについては明らかにすることはできなかった。 平成20年に中学校社会科地理的分野の学習指導要領が改訂され、ESD(持続可能な開発のための教育)の視点が初めて明記された。ESDは、地域を学習対象とし、よりよい地域を構築するために人々の価値観や行動を変革することを目指した教育である。地理的分野の学習指導にESDの視点を入れると、地域的特色をとらえるだけでなく、地域の課題やその解決策を考えることが必要になる。しかし、地域に対する考え方や地域の課題を解決する方策は、千差万別である。したがって、よりよい地域を構築しようと考えたとき、多様な意見や考えを出し合い、それらを調整することが必要になる。このように、多様な意見や考えを出し合い、話し合いを通して、意見や考えを調整し、合意形成を図ることによって、より一層、生徒の思考力や判断力が高められると考えた。
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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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