日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 706
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発表要旨
高知県地方における冬期の降水地域区分
*一 広志
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抄録


1.はじめに

高知県地方における冬期の降水の地域的な特性を把握し、降水の形態による地域区分を行なうことを目的として、1月の月間降水量と月平均気温ならびに月間日照時間との関係に着目してAMeDASのデータの解析を実施した。統計期間はAMeDASのネットワークが整備された1978年から2015年までの38年間である。

 

2.1月の月間降水量と月平均気温との関係

降水量、気温、風向・風速、日照時間の4要素を観測しているAMeDAS地点において、標記の38年間の月間降水量を目的変数y、同じく月平均気温を説明変数xとして、これらの関係が一次式y = ax + b で近似されると仮定して係数 a と切片 b の値を求めた。

すべての観測点において、これら2変数の間には正の相関関係が認められ、気温が高くなるにつれて降水量が増す傾向が認められる。この回帰式の係数aの値は、気温の変動が降水量に及ぼす影響度であると考えることが可能である。佐賀、窪川、大栃で20を上回る値を示している。内陸山間部では、本川では17台の値であるが西部の梼原、江川崎では7台にとどまっている。県西部の内陸山間部は、気温の変動が降水量に及ぼす影響は他地域に比べると小さいと考えられる。

切片 bの値は、内陸山間部の本山、本川、梼原、江川崎で正、その他の地点で負となっている。この値と考察対象期間中の月平均気温との間には1%水準のt検定で有意な負の相関関係が認められ、低温である地点ほど切片 b の値が大きくなる傾向がある。

 

3.解析結果より導き出された降水地域区分

 

a 太平洋側気候区

①  
東部地域

魚梁瀬、室戸岬、佐喜浜の各観測点を含む領域である。標記期間において県内で最大の降水量が観測される地域である。

②  
高知中央地域

沿岸部は須崎から田野にかけての地域で、内陸部は繁藤、大栃の各観測点が含まれる。沿岸部における標記期間の降水量は県内で最小であり、日照時間は最多である。

③  
窪川・佐賀地域

月間降水量と月平均気温との正の相関関係が高い地域である。先述の一次式の係数aの値が大きく、気温の変動が降水の生成に及ぼす影響が大きい地域であると考えられる。

④  
中村・清水地域

東部地域に次ぐ多降水域である。岬端部の清水は県内の観測点の中で月平均気温と月間降水量の変動係数とが最大であり、月平均日照時間も180h以上の極大を示す。

⑤  
宿毛地域

月間降水量は東側に位置する中村・清水地域よりも少ない。一次式の係数aの値が太平洋側気候区では最も小さく、気温の変動が降水に及ぼす影響の小さい地域であると考えられる。

 

b 準日本海側気候区および山岳地域

一次式の切片bの値が0から20の区間が先述の太平洋側気候区との境界に相当しているものと考えられる。月間降水量の変動係数は小さく、月間日照時間のそれは大きい特徴がある。

⑥  
中部内陸・山岳部地域

本山と本川とが含まれる。本川は月平均気温が県内観測点の中で最も低く、月間日照時間の変動係数が最大である。高知県地方の天気予報の発表区域である「高吾北・嶺北」に旧本川村の地域を加えた領域にほぼ一致するものと見られるが、気温や日照時間を目的変数とした地域区分を行なうと複数の地域に細分化されると考えられる。

⑦  
西部内陸・山岳部地域

梼原と江川崎とが含まれる。月間降水量の変動係数および気温の変動が降水に及ぼす影響は県内で最小である。「準日本海側気候区」の特徴が県内で最も強く現れている地域であると考えられる
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