抄録
昨今のモバイルテクノロジーの進歩は、携帯型電子媒体、省エネ型環境センサー、GPS内蔵型機器、モバイルインターネットなど、都市生活空間環境の研究にさまざまな新しい可能性を与えようとしている。本研究では、都市の街区スケールにおけるモバイルテクノロジーを応用したリアルタイムの体感気候データの収集・空間分布表示システムの提案を行っている。このような情報がリアルタイムで収集され、集中処理されて発信されることは、都市における暑熱的危険空間についての情報を市民が共有でき、そのフィードバ
ックとして利用者個人が必要な対策をとれることを担保するものである。また、屋外快適性を高めるための街区や建築のデザインを属地的に実現するための基礎データとして、このような高空間解像度の環境情報データベースを、高時間解像度で構築する必要がある。演者らは、AndroidにCO2濃度等のセンサーを組み込み、リアルタイムに計測データを位置情報、時刻情報とともにサーバーに集約する、ポータブル型環境モニタリングシステムを開発し、ラグランジュ的環境モニタリングの実施をつくばと東京で行った結果、大気汚染現象の局地性がきわめて高いことが具体的な時空間情報として示された。また、送信された被験者の暴露情報と健康情報を組み合わせることにより、リアルタイムのリスク診断が可能となった。