日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P917
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発表要旨
晴天弱風日の都市における夜間の温位鉛直分布の変化
*中島 虹髙橋 日出男横山 仁
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抄録

大都市では夜間であっても地表付近の気温が高く,接地逆転が下から浸食される(藤部 2012).大都市における混合層高さは郊外と比較して高くなり (Barlow 2014),200 m程度まで混合層が維持されることが観測されている(Pal et al. 2012).都市混合層高さは大気汚染物質や熱の拡散に対して影響を与えると考えられ,都市における気温の鉛直分布の時間変化を把握することは熱環境を改善するためにも重要であると考えられる.これまでの都市の気温鉛直構造の研究の多くは短期間の観測やモデルに基づく研究が多く,夜間の都市混合層高さについて長期間の観測データを用いた検討は少ない.本研究では,東京タワーの気温観測データを利用して,都心における夜間の気温鉛直分布の時間変化を把握することを目的とした.1990年から2012年のうち,東京タワーのデータが得られなかった2000年を除外した22年間の冬季(12-2月)と夏季(6-8月)を対象期間とし,期間中の気象庁の降水量,雲量,風速を用いて晴天弱風日を抽出した.東京タワーの気温については,都市大気下層から上層までの温位が一定となると考えられる強風日(東京の前3時間のスカラー平均風速が 7 m/s以上) における東京タワーの温位鉛直分布 (図1)から,4 m の温位と等しくなるようにその他の高度の温位を補正して利用した.都市上空の安定度の鉛直構造を把握するために,東京タワーにおける6時の各高度間での温位傾度を算出した(図2) . 夏季の温位傾度は0付近となる頻度が多く,地表付近から250 mまで温位傾度の小さい中立層が形成される.温位傾度が1を超える頻度はいずれの高度においても少ない.冬季は高頻度となる温位傾度は夏季よりも大きくなる.また,64m以上の高度で温位傾度が2.0を超える事例がある.一方で,4-64mでの温位傾度はほかの高度と比較して小さい.以上のことから,夏季には地上から250 m以上まで混合層が形成・維持される一方で,冬季には夏季と同様に混合層が維持される事例と安定層が74 m以上で形成される事例に分類されると考えられる.

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