日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 617
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発表要旨
世界の博物館アメリカ
移民と基層文化の再検討によるグローバル地誌の構築
*矢ケ崎 典隆
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抄録
 アメリカ地誌の試みとして、「世界の博物館アメリカ」という方法を提案する。アメリカへの移民の出身地は時代によって異なるが、移民集団はいつの時代にも異なる文化を持ち込み、それが蓄積され、基層(古いものが残るアメリカ)を形成してきた。移民出身地の文化の存在に着目し、そうした文化を再評価し再生する近年の動向に光を当てることにより、現代のアメリカ地誌を読み解き直すことができる。特に注目すべきは移民博物館で、1970年代以降のアメリカ社会の動向を知るための重要な手掛かりとなる。移民集団にとって移民博物館は、移住の歴史を保存し移民集団の自己認識を確認する空間である。一方、アメリカ社会にとって移民博物館は、多民族社会を再認識し、アメリカ国民としての自己認識を強化する空間である。移民博物館には3類型が確認できる。すなわち、国家レベルの移民博物館、移民集団を単位として組織・運営される移民博物館、そして、地域の公共博物館における移民関連展示である。これらに加えて、移民関係の祭りやパレードなど、いわゆる無形博物館の存在を認識することも重要である。アメリカは世界各地との人的文化的な交流を通して発展し、多様な文化や歴史がアメリカの移民博物館に記憶され保存される。同時に、アメリカ文化は移民の出身地に影響を及ぼしてきた。アメリカを「世界の博物館」として検討することによりグローバル地誌の一つの可能性が提示される。
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