日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0102
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発表要旨
糸魚川ジオパークにおける学校教育と社会教育の新たな展開
*竹之内 耕
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抄録

1. はじめに
 糸魚川ジオパークでは,学校教育と社会教育の中に,ジオパークの視点を導入して新たな模索と展開を試みてきた.これらの試みの目的は,子どもたちを含む市民に地球と人々との関わりを,持続可能な視点をもって理解してもらい,持続可能なジオパークを実現するために,大人世代のジオパークへの参加を促し,さらに将来世代の人材育成を行うことにある.以下に,学校教育と社会教育にける仕組みづくりと実践例を紹介する.
2.学校教育
(1)ジオパーク学習を位置づける
 糸魚川市教育委員会は,子ども一貫教育方針(0~18歳まで)の中に,ジオパーク学習を位置づけ, 2011年から実施に移された.「糸魚川ジオ学」と呼ばれる学習体系が考えられ,発達年齢に応じた指導の重点・ねらい・実践例が示された.教育現場では,次に述べるような学習支援策が行われるようになった.(2)具体的な支援,実践例
 理科教育センター(教員への理科教育支援組織)の組織的な強化,教員研修会(理科センター・糸魚川市教育研究会[理科部会・社会科部会・ジオパーク部会]・糸西自然友の会[おもに教員OBからなる]・糸魚川ジオパーク協議会によって開催されるもの),副読本4冊作成(理科[小学校3・4年用,5・6年用]・社会科[小学校3~6年生用]・総合学習[小学校5・6年と中学生併用]), 教育用サイト(地層観察)の整備,野外学習支援フィールドノートの作成,ジオパーク学習交流会(小学校~高校までの合同発表会),「ジオ給食の日(毎月第一水曜日)」の設定,防災学習,香港ジオパークとの児童・生徒交流,上越教育大学との連携協定などが行われている.
3.社会教育
(1)ジオパークとしての新たな実践例
 ジオパーク検定(初級・上級・達人級)が実施され,市民の糸魚川を知ることの動機づけになっており,検定合格者からジオパークガイドになるなど人材発掘の場ともなっている.ジオパークガイド養成講座,飲食業や宿泊業施設などの経営者・従業員を対象にしたジオパークマスター講座が行われている.
(2)従来の枠組みの中で
 公民館活動に,ジオパークが取り入れられた結果,身近な地区単位の自然や文化を深く知ることができるようになり,ジオサイトの清掃活動や地区の新たな地域資源の発掘活動につながっている.防災講演会が各公民館で開催されるようになり,大地の生い立ちと自然災害が関連付けて理解されるようになった. 博物館では,ジオパークの普及講演会や野外案内を行っており,市民のジオパークへの支持やジオパーク運動への参加のきっかけをつくっている.従来実施されてきた講演会・巡検会・観察会・子供向け体験学習会などは,大地や動植物・生態系・歴史文化の要素を取り入れて改良されている.
 図書館では,ジオパーク書籍コーナーが設けられ,ウェブサイトのテーマ別検索に「ジオパーク」の項目が設けられた.

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