抄録
1.はじめに
「ビーチロックはおもに熱帯や亜熱帯地方の海岸でみられる新しい地形である。ビーチロックは潮間帯で膠結した海浜堆積物が海側に15度以下で傾き累重しミクロケスタ状の地形を呈する。日本にビーチロックをはじめて紹介したのは米谷(1963)である。以来, ビーチロックの特徴(分布や年代)が多くの研究者によって明らかにされてきた(田中, 1978, 1994;Kawana, 1981;高橋・木庭, 1984;小元, 2005など多数)。本発表では小元が1993年から2008年までに調査した南西諸島のビーチロックの特徴について報告する。
2.ビーチロックの分布範囲
ビーチロックは, 北は能登半島, 東は房総半島, 西は与那国島, そして南は波照間島まで確認されているが, 南西諸島の島々の発達が良好である。南西諸島のビーチロックの多くは潮間帯にあるが, 離水したビーチロック(波照間島ほか)や, 沈水したようにみえるビーチロック(例えば沖縄本島国頭村辺土名沖)も存在する。
3.ビーチロックの年代
ビーチロックの年代として堆積物から採取した貝化石やサンゴ化石と, 石灰岩質砂岩の14C年代が報告されてきた。南西諸島のビーチロックは約7,500 cal BPに形成されはじめ, ごく最近まで形成されている(小元, 2005, 2007)。
4.ビーチロックの成因と成長速度
ビーチロックの有力な成因説として①地下水説(米谷, 1963;Russell, 1959)と②海水説(武永, 1963;Stoddort and Can, 1965など)がある(小元, 2004)。一方, ビーチロックの水平方向への成長(形成)速度に関する報告は小元(2008)による宮古島大浦田原海岸の事例しかない。
5.ビーチロックを指標とした海水準変動
高潮位以上の標高にビーチロックが分布する地域は隆起したか, あるいは陸水による影響を受けた河口や砂丘近辺に位置する。また現海面下に位置するビーチロックは, 当該地域が地殻変動により沈降したか, もしくは海水準が現在より低い時期に形成されたかのいずれかである。
6.まとめと展望
小元が測定した500件以上のビーチロックの年代はβ線法(ガスカウンターやLSC)による。AMS法で年代を決定する場合, 測定に必要な炭素量がβ線法の1/1,000程度で十分なため, 採取した試料の測定部位の適切な選択と試料の変質の有無の確認が重要である。
引用文献
小元久仁夫 (2004, 2005, 2007, 2008):日大(文理)自然科学研究所「研究紀要」. 39, 15-31;40, 1-27;42, 1-14:日本地理学会発表要旨集. 74, 79.
高橋達郎・木庭元晴(1984):琉球列島の地質学的研究. 5, 125-131.
武永健一郎(1965):地理学評論. 38, 739-755.
田中好國(1978, 1994):鹿児島地理学会紀要. 23(1,2), 1-18;兵庫地理. 39, 1-12.
米谷清二(1963):地理学評論. 36, 512-527.
Kawana, T. (1981):琉球大学教育学部紀要. 25(1), 245-249.
Russell, R.J. (1959) Zeitschrift für Geomorphologie, NF, 3, 227-236.
Stoddart, D.R. and Cann, J.R. (1965):Jour. Sed. Pet., 35, 243-247.