日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P923
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発表要旨
南アフリカ共和国リンポポ州におけるシロアリ塚土を用いたレンガ製造
*野中 健一小野 映介ジョン ジラ
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抄録
アフリカ南部の乾燥地では,シロアリの繁殖虫および働きアリが食用とされ,シロアリによって形成される塚の土は作物肥料として利用されたり,農地そのものとして使われたりしている.さらに,シロアリ塚の土は建築材料として床や壁に利用される場合がある.当地域では,そうしたシロアリやシロアリ塚の持続的な利用が認められる.シロアリおよびその生産物である塚を用いた持続的な生物資源利用と,それによって規定される集落立地や土地利用は,乾燥地における農業・生活の持続性を検討する上で興味深い事象である.
筆者らは世界各地を対象として,シロアリが現地の人々にもたらす貢献・再生力と利用可能性を実証的に調査し,自然と人間の共生関係のユニークかつ新たな持続的土地利用の地域システムとして提示することを目的とした研究を進めている. 今回,調査地の1つとして南アフリカ共和国リンポポ州を選定し,2016年2月~3月に現地調査を実施した。そこで,シロアリ塚土を用いたレンガ製造および住宅建造を調査することができたので報告する.
調査を行った村では,家の建設にシロアリ塚土を用いたレンガが多く用いられていたが,レンガに用いられるシロアリ塚土は,既にコロニーが死滅したシロアリ塚から採取される.そこからは,アクティブなシロアリ塚は有用な資源であるという住民の認識が垣間見られる.シロアリ塚と住民の共生が如何になされているのか,今後,南アフリカをはじめとしたシロアリ塚の分布地域において,時間軸・空間軸を意識しながら,シロアリ塚利用の実態を明らかにしていきたい.
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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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