日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P916
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発表要旨
『近畿バルサミット』に参加する団体のガイドマップの類似性と多様性
*石原 肇
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抄録
Ⅰ はじめに

近年、中心市街地の活性化策として、100円商店街、バルイベント(以下、バルという)、まちゼミが注目されている(例えば、長坂他2012)。バルは、2004年の『函館西部地区バル街』での開催に始まり、松下(2013)は、あえて単純化すれば、バル街とは、西部地区とバル街マップ(ガイドマップ)、ピンチョー(つまみ)の3つで構成されている飲み歩きイベントであるとしている。その後、全国各地での開催が飛躍的に増加してきている。発表者は、2016年5月に開催された第14回『伊丹まちなかバル』と、近畿地方等でバルを開催している団体が会する第11回『近畿バルサミット』(伊丹市主催)に参加する機会を得、さまざまなガイドマップを入手した。バルに関する先行研究は、商学や建築学の視点からごくわずかしかみられず、ガイドマップの検討はなされていない。他方、まちあるきブームをふまえ、遠藤(2016)は実務的な観点からまちあるきマップを論じている。しかし、地理学研究の対象としては必ずしもまちあるきマップに関心は持たれてこなかったようである。

このようなことから、発表者は、『伊丹まちなかバル』の取組を対象として、開催する上で必要不可欠な要素としてのガイドマップに着目し、その変遷を把握した。その結果、参加者にとって使いやすく、かつ参加店舗の提供内容がわかりやすい「バルマップ」へと改善が続けられていることを明らかにした(石原2016)。

そこで、本報告では、『近畿バルサミット』に参加している団体のガイドマップを掲示し、今後のバルにおけるガイドマップ研究の可能性について検討することを目的とする。

Ⅱ 研究方法

本発表では、上記の第11回『近畿バルサミット』への参加16団体(滋賀県2、大阪府5、兵庫県8、島根県1)のうち、会議資料として配布されたガイドマップあるいはガイドマップブック等10点を比較することとする。

Ⅲ 結果および考察

ガイドマップ等の仕様をみると、折畳式ガイドマップが2、ガイドマップブックが7(伊丹市を含む)、マップが無くチラシのみが1であった。折畳式ガイドマップは『伊丹まちなかバル』第1~9回での仕様に類似している。ガイドマップブック7のうち、『伊丹まちなかバル』の現行のガイドマップブックと同じ大きさのものが4と最も多くなっており、大きさをより大きくしているものが2であった。『伊丹まちなかバル』で配布されてきたガイドマップあるいはガイドマップブックと類似したものが多くみられる一方で、オリジナルな取組も一部でみられる。また、ガイドマップ等に掲載されているマップの数をみると、1つが4、2つが1、3つが3、6つが1となっており、参加店舗の集積のしかたにより差異が生じている。さらに、マップの記載内容をみると、方位有りが3、無しが6、縮尺は全て無し、駅は全て有りとなっており、参加店舗の位置は、駅を起点としてわかるようにすることが重視されているようである。

『伊丹まちなかバル』は、中心市街地活性化に向けた取り組みとして、自立的に運営されていることが画期的である。また、このことで極めて自律的な運営が確保されていることも重要な点である。さらに、この取組が『近畿バルサミット』を通じて他の地域に波及しており、ツールとしてのガイドマップも他の地域に模倣されている点が多い。

今後、各団体でのガイドマップの仕様や記載内容の変遷と、各団体のバル取組開始時期、中心市街地の規模、参加店舗数等との関係を明らかにする必要がある。
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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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