日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S303
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発表要旨
複雑適応系の視点から社会生態系とその守り手としてサステナブル・ツーリズムの分析
*チャクラバルティー アビック
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抄録
社会生態系は、自然的要素と人間社会的要素が複雑に混合した常に変化する「複雑適応系」である。また、「自然環境」は、単なる生物からなるのではなく、地質的、地形的特徴もその重要な部分を占める。しかしこれまでの社会生態系論においては、生物を中心とした生態系ダイナミクス(Ecosystem dynamics)が重視され、このような生物的環境を養う非生物的自然のプロセスは十分に配慮されていない。特に広域にまたがる社会生態系ランドスケープでは、非生物的自然のメカニズムの変化による 生物多様性への影響は著しくなっていることがガバナンスの大きな課題の一つである。社会生態系は複雑適応系であるため、そのガバナンスにおいて理解されなければならないのは、社会生態系の変化は様々なスケールにまたがる、ということである。非生物的自然の変化は、生物的環境に比べて大きい時空間スケールで起きることも多く、膣・地形の変化はどのように生態系に影響を及ぼすかをわからないことも多い。さらに、非生物的自然の価値に関するマネージメントの意識・ノウハウが低調で、そのガバナンス論もなかなか発展してない 。このような状態は、広域にまたがる長時間を経て形成された社会生態系の分断化にもつながっている。 この発表では、広域にまたがる世界遺産地域の事例を紹介し、複雑適応系的特徴を明示する。世界遺産の場合、その観光的価値が高く意識されるが、複雑適応系として観光資源の評価があまりなされていないから、「生物的環境」に主眼を置かれは観光ガバナンスの議論になってしまい、生態系の変化を引き起こす非生物的(地形的)メカニズムへの擾乱を認識した取り組みにつながる対策が少ない。発表では複数の事例を紹介し、各事例から地形的メカニズム、生態系、観光資源のつながりについて述べ、社会生態系のガバナンスにおいて非生物的自然の価値を意識したツーリズムガバナンスの役割について議論する。
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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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