日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 312
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発表要旨
中国における都市新市区の居住者の属性と居住地選択
新市区住民と旧市区住民との比較から
*滕 媛媛
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抄録
近年、中国の都市では大量の新市区が建設された。しかし、どのような住民が新市区居住を選択する傾向があるかはまだ明らかになっていない。そこで本研究は、江西省南昌市を例として取り上げ、新市区住民住民の属性、居住地選択する際に重視する要素、ライフスタイルに着目し、旧市区住民と比較することで新市区居住を選択した住民の特徴を明らかにした。そのため、2014年に南昌市で実施したアンケート調査から得られたデータを用い、二項ロジスティック回帰モデルを構築した。分析結果は、以下のとおりであった。 まず、個人・家庭の特性からみると、住宅面積が大きく(90㎡以上)、夫の職業が自営業(管理職に参照)である住民は、旧市区に居住する確率と比較して、新市区に居住する確率が高かった。一方、自動車利用の可能性が低く、世帯収入が低い住民も新市区居住する確率が高かった。すなわち、都市富裕層と貧困層は共に新市区に居住する傾向があると考えられる。ただし、新市区における分譲住宅の持ち家世帯の中、自動車利用の可能性が低い住民の割合は約3割で、世帯収入が低い(5000元未満)住民が約2割であった。すなわち、新市区における分譲住宅の持ち家世帯の中で、都市貧困層世帯は少数で、多くの世帯が都市富裕層であると考えられる。  また、住民の経済状況はそのライフスタイルに影響を与えると考えられる。そのため、ライフスタイルからみると、消費パターンが高級志向であり、また、娯楽方式が上品である住民は、旧市区に居住する確率と比較して新市区に居住する確率が高かった。  さらに、居住選択の重視要素の観点から考えると、教育施設を重視する住民およびアクセシビリティを重視しない住民は、旧市区に居住する確率と比較して、新市区居住する確率が高かった。
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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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