日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 818
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要旨
鹿島槍ヶ岳カクネ里雪渓の氷体の流動
*福井 幸太郎飯田 肇*カクネ里雪渓学術調査団
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キーワード: 氷河, 流動, 雪渓, GPS, 日本アルプス
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抄録

はじめに
日本では、立山剱岳に氷河が現存していることが学術的に認められている(福井・飯田 2012)。カクネ里雪渓では、秋になると氷河の特徴を備えた氷体が表面に出てくることが昭和30年代に明らかにされていた(五百沢 1979)。しかし、その後約60年間観測が行われていなかった。
2011年6月にアイスレーダー観測を行ったところカクネ里雪渓の氷体は厚さ40 m以上、長さ700 mと立山剱岳の氷河に匹敵する規模であることが分かった。氷河か否か明らかにするために2015年秋に測量用GPSを使用して氷体の流動観測を行ったのでその結果について報告する。
調査方法
 ①ポールの移動量の観測(全5地点):9月24日にアイスドリルで表層部の積雪を貫通し氷体に達するまで穴を開け、長さ4.6 mのポールを挿入してその位置を高精度GPSで測量した。10月18日にポールの位置を再度GPSで測量し、ポールの動いた量から氷体の流動を観測した。水平方向の誤差は約1 cmである。
②クレバス断面での氷体の観測:9月24日と10月19日に雪渓上流部の深さ6 mのクレバスに潜り、数カ所から氷をサンプリングし、現地にて密度観測や薄片の作成・観察を行った。
結果
 ①ポールの移動量観測の結果、雪渓の中流部では24日間で15~17 cm、上流部と下流部では12~13 cmと誤差以上の有意な流動が観測された(図1)。流動方向は、東北東で雪渓の最大傾斜方向と一致した。
②クレバス断面での氷体観測の結果、雪渓表面~深さ1 mでは、密度が700-780 kg/m3で積雪中の気泡がつながっているためフィルンであった(図2)。深さ16 mでは、密度が820 kg/m3を超え気泡が独立していて氷河氷であった。
考察
今回の流動観測では、24日間で最大17 cmに達する比較的大きな流動が観測された。観測を行った秋の時期は、融雪末期にあたり、雪氷体が最もうすく、流動速度が1年でもっとも遅い時期にあたる。このため、カクネ里雪渓は、1年を通じて連続して流動する「氷河」である可能性が非常に高いと言える。 年間の流動速度は、2.5 m前後と推定され、剱岳の三ノ窓・小窓氷河(3~4 m/年)よりは小さいものの立山の御前沢(ごぜんざわ)氷河(0.2~0.5 m/年)よりは大きかった。

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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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