日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 608
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要旨
句股定理による地図作成法の復元
大和三山を例として
*木庭 元晴
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抄録

2015年本会秋季大会(愛媛大学)では,歴史地理分野で,『飛鳥時代の中軸古道と藤原宮の位置選定に係わる新たな視点』というテーマで発表した。飛鳥時代の藤原宮や中軸古道が,推古紀に選定された大和三山の垂心に基づくものであることを御井の歌などから明らかにした。 垂心を決めるには大和三山の正確な平面図を作成する必要があるが,推古紀にその手法が獲得されていたのか,確認する必要があった。中国では三国時代三世紀の数学者劉徽(りゅうき)による算術書『九章算術』(きゅうしょうさんじゅつ)の注釈本と,その付録として氏によって著された『海島算経』(かいとうさんけい)があった。これは中国からまたは朝鮮半島を経由して古代日本にもたらされた。周代に成立し漢代には現在残る形でまとめられた天文書『周髀算経』(しゅうひさんけい)の北極璿璣(せんき)などの天文観測技術とともに,土木測量に最も多用されたと思われる前2者の句股定理(こうこていり,中国で独立に発見かつ多用されたピタゴラスの定理)は,古代日本の土木測量に大いに貢献したものと思われる。 『海島算経』には句股定理を使った九つの例題があり,うち,最も基本的な例題は水平方向については問一,垂直方向については問四である。過去,『海島算経』の個々の例題についての解説があるが,ただこの手法の幾何学的な説明にとどまっている。 問一(川原, 1980: 265)を次に紹介する。┣——————————— いま海島を望む。高さ三丈の二個の表(目印の棒)を,前後千歩隔て,前表と後表を海島の三者が一直線になるように立てる。ここで前表から百二十三歩退いて,目を地につけ海島の峰を望むと,前表の末に重なる。また後表から百二十七歩退いて,目を地につけ海島の峰を望むと,後表の末に重なる。問う,島の高さおよび(前)表からの距離は,それぞれいくらか。—————————————————————————————┫ この問一では,水平面上に設置した二本の測量棒(表,gnomon)を使って,いわば句股定理に基づいて,スタジア測量を実施し,間接的に島の頂までの高さと距離を求めている。 問一では水平面を前提とするが,実際の地表には凹凸があるので,実際の測量ではこれに対する対策がとられた筈である。そのヒントを問四にみることができる(川原, 1980: 266)。┣—————— いま深い谷を望む。矩(さしがね)を谷岸に偃(ふ)せ,「句」の高さを六尺にする。ここで「句」端から谷底に望むと,下の「股」に九尺一寸入る。また二番目の矩を上に三丈隔てて設け,さらに「句」端から谷底を望むと,上の「股」に八尺五寸入る。問う,谷の深さはいくらか。—————————┫ 次に図は,両問を使って三山の内部から畝傍山を測量する手法を報告者が復元したものである。  当日,この図などを使って測量手法を復元する。以 上

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