日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 102
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要旨
長野盆地南部の微地形と家屋形態にみる千曲川と犀川の洪水特性
*川村 志満子
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抄録

本研究は,長野盆地南部の犀川扇状地を中心として,微地形と家屋形態,施設から過去の千曲川と犀川の洪水の特徴を示し,地形と家屋や集落の形態と洪水との関連を考察するものである。長野盆地の沖積低地には,千曲川とその支流(犀川をはじめとする諸河川)が形成した扇状地,自然堤防,後背湿地などの河成堆積地形が分布している。また,この地域は古代から大洪水による被害を受け,戌の満水(1742年),善光寺地震後の犀川の大洪水(1847年)など多くの大洪水が史料に残されている。この地域には過去の洪水の様相を推測するような地形と,いくつかの家屋形態や水防施設が残されている。本研究では地形分類を用いて微地形を観察し,一般的な史料と絵図や発掘資料により過去の千曲川と犀川の洪水を表す表層堆積物や痕跡を調べて現地での確認を行った。その結果,洪水範囲には千曲川の旧河道や広大な後背湿地など特徴的な微地形の形成が認められ,洪水時の湛水が推測された。家屋形態,水防施設では,例えば長野市東の千曲川と犀川の合流部地点右岸の集落に形成された輪中堤から洪水への対応が示唆された。その他にも洪水に対応した施設があり,微地形と家屋形態,施設から千曲川と犀川の地域的な洪水特性が示唆された。また,現存するこれらの記録から,過去の経験という情報を将来へ引継ぐ可能性が推測された。

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