抄録
2014年秋季における晴天静穏日(15日)の中から典型的な晴天静穏日(10月18日)を対象として神戸市域における局地風系と気温日変化について解析を行った. これまでの研究においては,神戸市域においては熱的局地循環が発達し,時間とともに大阪湾と大阪平野の大きなスケールの海陸風の影響を受けた風向の変化が見られることが明らかとなっていた.また,六甲山地からの冷涼な山風が夜間における市街地の気温に影響を与えていることも指摘されていた.しかし,これらの研究は平均値を用いた議論であったり,市街地域の一部に限った解析,もしくはシミュレーションに基づく解析であった.特に神戸市域内における多地点の気温観測はほとんど実施されておらず,気温日変化に関する十分な知見は得られていない. そこで,本研究では神戸市域33ヶ所に独自に気温観測器を設置し,典型的な晴天静穏日における気温日変化の特性を明らかにし,局地風系との関係を調査した. その結果,以下6点が明らかとなった. ① 各地点の気温日変化の特徴から,神戸市域を5つの地域(山麓,西部,中央部,東部,人工島)に区分することができる ② 5つの地域ごとに平均した気温の日変化の比較から,山麓では16時以降における気温の急激な低下が顕著に見られた.この気温低下は北寄りの風向への変化と対応していることから六甲山地からの冷涼な山風によって生じている可能性がある ③ 冷気流による気温低下効果の影響範囲は概ね山麓から1km前後であるが,影響範囲が小さい領域もあることが示唆された. ④ 西部,中央部,東部の比較から,西部においては09時頃から気温上昇率が低下し,日中には西部の気温が低く,中央部,東部の順に気温が高くなっており,夜間においては中央部が高温傾向を示していた. ⑤ 人工島上においては,気温日変化の振幅が小さい傾向があり,16時以降の一定の気温低下と21~22時における気温の再上昇が特徴的であった.気温の再上昇は,東寄りへの風向変化と対応していることから,大阪平野を吹走した相対的に高温な大きなスケールの陸風の影響を受けている可能性がある ⑥ 市街地中心部の3地点の気温日変化の比較から,最中心部における気温は夜間において高温傾向を示すが,日中は反対に低温傾向を示した 本研究では,晴天静穏日における局地風系と気温日変化の関係を典型的な抽出日について解析した.その結果,気温日変化における特徴的な変化が局地風系の風向変化と関係していることが示唆された