日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S608
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発表要旨
知多半島におけるインバウンド観光の現状と課題
*杉本 興運菊地 俊夫
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抄録
本研究は、愛知県の知多半島におけるインバウンド観光の現状を明らかにし、その上でこれからの観光地経営や観光振興における課題を検討することを目的とする。知多半島では、名古屋市の南に位置しているという特性から、名古屋市からの日帰り観光客が主に訪れている。しかし、国内宿泊観光客の地方分散や外国人観光客のインバウンド対応による、さらなる観光振興を目指している。今回は特に外国人観光客向けの宿泊施設の利用や情報提供の仕方を検討するための調査を、民間会社と共同で実施したため、その結果から判明したことを中心に発表する。本研究では、1)観光に関する各種統計データの分析と、2)現地での聞き取り調査の結果を総合し、インバウンド観光の現状と課題を明らかにする。前者では、知多半島および名古屋市を含む周辺地域の宿泊容量と観光資源のデータを地図上にプロットし、地域の観光ポテンシャルを探る。また、RESASを用いて、外国人観光客の愛知県内での訪問先や消費動向を明らかにする。後者では、2016年10月8日から10日にかけて、知多半島の観光施設や宿泊施設および観光協会・DMOを訪問し、の代表者4名に対して観光地経営や観光情報提供に関する聞き取り調査を実施した。紙面の都合上、宿泊容量と観光資源の分析結果のみを記す。まず、知多半島では中部国際空港エリアに大人数を宿泊可能な他、半田市、美浜町・南知多町の西海岸、知多半島先端エリア、日間賀島、篠島において小容量ではあるが宿泊可能な地域が存在する。これらの地域を拠点とした観光エリアや観光周遊ルートが構築可能である。したがって、知多半島における海岸に面した旅館を活用したインバウンド観光に可能性がある。しかし、海岸に沿って立地する旅館や民宿、あるいはオーシャンビューな旅館のインバウンド観光への活用状況は、そのポテンシャルから考えると十分に機能しているとはいえない。知多半島の観光で重要なマーケットと捉えられている東南アジア諸国から訪れる外国人への情報提供や言語対応が必要であろう。 外国人向けパンフレットには歴史、伝統、産業に関連した資源が多く紹介されているが、以下の2点が不足している。1つは、ストーリー性の欠場である。多くの観光スポット(点)を結び付けて線にし、線を重ね合わせて面にしていくストーリー性が不足している。ストーリー性のある観光は特に欧米人が好むため、ストーリー性を構築することは重要である。もう1つの不足点は観光の動線の確保である。つまり、セントレア(中部国際空港)に降り立った観光客をどのようにして知多半島の南に、特に海岸部に足を運ばせるかである。公共交通機関やレンタカーなどの動線を確保する手段として考えられる。しかし、現実問題として、公共交通機関は採算性の問題、レンタカーは交通ルールや案内の国際化の問題に直面する。効果的な方法として、シャトルバス形式でセントレアから知多半島の海岸リゾートに送迎する方法や、レンタサイクルの活用が考えられる。
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