抄録
1. はじめに 筆者は地理学のアウトリーチの手段として,ご当地グルメに注目をしてきた(長谷川2015).その中で,地理を気軽に一般の人に知ってもらう手段として,地理的な説明を絵葉書の中に入れることで読み手がどう感じるのかについてアンケート調査を実施した(長谷川2016).本発表ではそのアンケートの回収結果について報告する. 2. 調査方法 学生目線での親しみやすさやデザインに注目したアウトリーチを試みていることもあり(お茶の水女子大学ガイドブック編集委員会編2016),絵葉書の作成は学生主体で行った.具体的には,諏訪地方に学生3名と現地調査へ行き,寒天を使った店舗(和菓子店,寒天製品販売を併設する寒天料理店,寒天販売店)を訪問し,見学・聞き取りを行った.その後学生が絵葉書の原案を作成し,筆者が一部チェックを入れ(科学的な説明を補う部分のみチェックし,デザインやレイアウトについては一切手を入れない),3種類の絵葉書を作成した.筆者はアンケート調査の葉書を作成し,絵葉書3種とアンケート葉書の4枚を1セットとした.古今書院発行の月刊「地理」に掲載の原稿(長谷川2015)に関連するため,古今書院から直送される雑誌約650部に付録として同封した(2016年5月末発送).また約300部を諏訪の前述の和菓子店,寒天料理店の店頭に「ご自由にお取りください」と置き,来店客に自由に持ち帰ってもらえるようにした(2016年6月から12月にかけて配布).葉書の回収は2016年6月から2017年2月までに行った.回収数は86である. 3. 結果 主要な結果を図で示す.寒天の原料が海藻であることは9割の人が知っており,諏訪地方が寒天の産地であることを知っている人も6割近くいた.が諏訪地方が天然角寒天の唯一の産地であることは2割程度の人しか知らなかった.絵葉書の解説を読んで半数近くが寒天に対する見方が変わったと答え,このような絵葉書があれば欲しい人が9割で,特に購入したい人が半数にのぼった. 4.まとめ このアンケートは比較的地理に詳しいと考えられる月刊「地理」の読者,ならびに現地の店頭に買いに来る顧客ということで,いわゆる「一般人」とはずれた人々への調査である.また月刊地理の読者と現地の来店客では回答に差が見られる可能性も高いため,当日の発表ではこれらを分けた報告もしたい. 謝辞 絵葉書の配布に協力いただきました新鶴本店,トコロテラスの皆様に感謝申し上げます.またアンケートの回収にご協力いただきました古今書院に感謝申し上げます. 本発表はロッテ財団症例研究「ご当地グルメを通じた地域理解のための実践的研究」の成果の一部である. 参考文献 お茶の水女子大学ガイドブック編集委員会編『地理×女子=あたらしいまちあるき』古今書院.128p. 長谷川直子 2015. 地理的視点とご当地グルメ. 地理.60(5):7-13. 長谷川直子2016. 350年の伝統のはなし. 地理.61(5):76-81.