日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P002
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発表要旨
マキノ断層による流路の変形と石田川・百瀬川の河川争奪プロセス
*森野 泰行
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抄録
  本研究は,石田川と百瀬川の間で生じた河川争奪の要因と年代を明らかにすることを目的とする。その手立てとして,石田川水系と百瀬川水系を横断するマキノ断層の断層構造に着目し,同断層が石田川と百瀬川にもたらした影響について考察した。さらに石田川と百瀬川の上~中流部の段丘面区分を行い,これらの形成環境とその年代を検討した。これにより河川争奪の生じたプロセスとその年代を推定した。
  マキノ断層は複数の平行した横ずれ断層によって構成される「右横ずれ左雁行断層」であることが確認できた。さらに雁行断層間にはこれらに直交する圧縮応力を受けた二次断層も複数確認された。これは二次断層によって隆起するマウンド状の小地形および沈降域が存在することを示唆する。旧石田川は雁行断層の破砕帯ならびに二次断層で生じた沈降域を選択して流れたため,山間部であるにも関わらず,蛇行していたものと推測される。
  石田川と百瀬川の上~中流部の段丘面を川上平面・近江坂面・アシ谷面・ハリ谷面・小坂谷面に区分しその形成環境を考察した。その結果,石田川・百瀬川の河川争奪には,姶良Tn火山灰降下以前に先行する2つの河川争奪が存在し,この争奪により百瀬川の谷頭は流量を増したため石田川と百瀬川の分水界を侵食していったことが明らかとなった。さらに,姶良Tn火山灰降下ころ,マキノ断層の二次断層によって生じた凹凸によって大きく蛇行していた旧石田川は,石田川と百瀬川の分水界を側方侵食によって低下させていった。そして石田川が分水界を越え,百瀬川に溢流することで河川争奪が生じた。その年代は近江坂面やハリ谷面の離水した姶良Tn火山灰降下以降,小坂谷面形成期の鬼界アカホヤ火山灰降下以前ということになる。
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