日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 706
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発表要旨
長期データからみる東日本の梅雨最盛期における多降水年の特徴に関する気候学的解析
*松本 健吾加藤 内藏進大谷 和男
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キーワード: 梅雨, 東日本, 大雨, 長期変動
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抄録
梅雨最盛期の東日本では,50 mm/日を超えるような「大雨日」の出現頻度は西日本ほど高くはないが,梅雨降水の将来予測などの際には,東日本のように大雨の少ない地域についても知見を整理する必要がある。そこで,東京を例とする東日本の大雨日について,解析を行ってきた。また,1950年以前も含めた長期解析(日本の気象官署の日降水量や天気図などに基づき)にも着手し,長期的な気候変化・気候変動だけでなく,種々の現象を把握して気候学的平均像を長期的なパラメータレンジで把握することを狙いとした報告も行った(いずれも2017年春の日本地理学会で発表)。本報はその続報として,限られた過去の地上データや天気図等から,どの程度,日々の現象の傾向を記述する気候学に迫れるかの検討を行う。  なお,気象庁が日原簿をスキャンしたPDFファイルも一部気象官署に関しては古い時期のものも気象業務支援センターを通して入手できたので,そこに記載されたデータについても活用法を検討したい。
東京と長崎の1901~2010年の梅雨最盛期(6月16日~7月15日)について、各年を総降水量と大雨日降水量の寄与率の特徴をみる。 東京(ア)では,大雨日での10 mm/h以上の降水の寄与は大きいが,大雨日がかなり少なかった。そのため,総降水量に対する大雨日降水量の寄与小さかったが,数10 mm/日程度の日降水量の寄与は大きく,全体の降水日数は少なくないため,総降水量も比較的大きくなっていた。東京(イ)では,大雨日の日降水量で,総降水量の2/3ほど稼いでいた。東京(ア)と同様,大雨日に対する10 mm/h以上の降水の寄与は大きく,大雨日の出現頻度も大きいため,総降水量に対する10 mm/h以上の降水の寄与が大きかった(図は略)。つまり,パターン毎の特徴について,大雨日や数10 mm/h程度の日の時間降水量というよりは,そのような降水イベントの出現頻度が大きく影響していると考えられる。
過去の天気図等からどの程度,日々の現象の傾向を明らかにできるのかを検討するために,まずは利用できる範囲の再解析データを用いてパターン毎の大気場と降水の特徴について吟味する。東京(ア)に該当する年では,東京付近で温度傾度が保たれているなか,何回か南風成分が大きくなっている。図は略すがそのときの日降水量は数10 mm/日から50 mm/日を少し超える程度だった。東京(イ)に該当する年では,気温の高い領域の南北変動の幅や南風が強まる時間スケールが(ア)と比べて少し大きいなかで,強い南風が侵入した一部の時期で大雨日が現れていた。このような大気場の解析の結果もふまえ,データが限られている時期について,データの有効な使い方も検討予定である。
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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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