抄録
日本では、2002年に都市再生特別措置法が公布され、大都市中心部は都市再生緊急整備地域に指定された。2002年には、建築基準法が改正されて、斜線制限の適用除外制度として天空率の指標が導入された。これにより、低層の木造家屋の多い地域に、超高層の共同住宅が多数建設され、景観は大きく変容した(藤塚 2017a)。
本研究では、東京を事例に、2000年以降のジェントリフィケーションの変化について検討する。2000年代の東京では、都心に近接したところでジェントリフィケーションは発現した(藤塚 2014)。1980年代の地価高騰期の投機的な不動産売買により立ち退きが起こり、1990年代半ば以降は低未利用地となっていたことが、その発現要因であった。中央区では、人口減少対策としての住宅附置からはじまった施策の変遷(川崎 2009)とともに、規制緩和により多数の超高層住宅を生み出した(上野 2017)。港区では、新たな地下鉄駅周辺への新築のジェントリフィケーションの発現(Lutzeler 2008)とともに、中小工場の集積地域においてグローバリゼーションが進行し、ジェントリフィケーションの発現に影響した(藤塚 2017b)。
ジェントリフィケーションの指標として、専門・技術,管理職就業者数の変化を使用する(図1)。2010年から2015年の90人以上の増加を町丁別にみると、2000年代に増加が顕著であった、中央区や港区にはいくつかみられるが、都心周辺の文京区や豊島区、品川区や目黒区に多く、発現地域は変化した。このように都心から離れた地区において専門・技術,管理職就業者の増加は顕著であるが、その要因を検討するとともに、影響についても考察する。