日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P112
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発表要旨
スリランカにおける選挙人名簿から作成した住民分布図における年齢別居住特性の把握
*後藤 健介Panditharatne N. G. S.
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抄録
1. はじめに

 スリランカでは、住所は各家庭が有しているものの、どの家族がどこにすんでいるかを示した、いわゆる住民分布図がないため、住民の居住特性を把握するのは困難である。そこで、本研究では、選挙人名簿から住民分布図を作製し、住民の年齢別居住特性を把握することを試みた。

 スリランカの選挙権年齢は18歳以上であるため、選挙人名簿には18歳以上の者しか登録されておらず、この選挙人名簿から作成した住民分布図には、18歳以上の住民しか反映されていないが、調査研究などを実施するには貴重なデータとなり得る。



2. 研究方法

 本研究では、試みとして、スリランカのカルタラ県ベルワラ地域を対象として、2つのGNエリア(Grama Niladhari地区)の選挙人名簿を入手して住民分布図の作製を行った。スリランカには9つの州(Province)の下に25の県(District)が行政区画として置かれ、さらにDSエリア(Divisional Secretary地区)、GNエリアが置かれている。対象とした2つのGNエリアでは、それぞれ665人、および1157人分の選挙人が登録されているものを用いた。選挙人名簿には、選挙人の名前、住所、国民ID、性別が家庭ごとに記載されている。なお、国民IDからは生まれた年を把握することができるため、年齢別の住民分布図を作製することが可能となる。

 また、分布図を作製する場合、電子地図上に保存・管理することが望ましいため、住居の緯度・経度が必要となる。そのため、今回はGPS機能付きデジタルカメラを用いて、各家庭を戸別訪問し、選挙人名簿に登録されている人物が、選挙人名簿に記載されている住所に実際に居住しているかを確認し、許可を得たうえで住居の前で選挙人名簿にその住民が記載されている箇所を撮影した。このことで、選挙人が住んでいる住居の緯度・経度が記録され、住民の情報も記録されることになり、容易に選挙人名簿と住居の緯度・経度をリンクすることが可能となる。



3. おわりに

 今回、これらの作業を現地で雇った補助員に実施させたが、大きな問題は生じず、容易に撮影、GPSデータの記録、選挙人名簿のリンクの一連の作業を行うことが出来た。勿論、タブレットPC等を用いて、電子地図上に直接住居をプロットし、種々の情報を入力していくことも、システムを作製すれば可能となるが、本研究では、現地の補助員でも簡単に実施できる方法として、今回の方法を試みた。

 この方法では、最終的には表作成ソフトやデータベースソフト等を用いて、写真とのリンク作業を行う必要があるが、それでもGPS機能付きデジタルカメラやスマートフォンなどで容易に地図作成できたことは大きな成果であった。また選挙人名簿は更新されていくため、その都度、本研究で作製した住人分布図に反映させれば、住民の居住分布の変化傾向を知ることも可能となる。

 今回、この住民分布図から年齢構成別の居住分布特性を把握することもできた。
 なお、本研究は、2018年春季学術大会にて発表予定であったが、諸事情により急遽発表取りやめになったことから、今回発表することとなったことを付記しておく。
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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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