日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 538
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発表要旨
衛星画像を用いた南鳥島の植生図の更新
*安田 正次
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キーワード: 植生図, 離島, 衛星画像
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抄録
1.はじめに
南鳥島は、我が国最東端の島(北緯24度17分、東経153度58分)である。南鳥島では1985年に東京都によって植生図の作成が行われた。この結果は調査を行った奥富清と井関智裕によってまとめられ2004年に刊行されている。その後、現地での調査は行われていないものの、空中写真による調査によって植生図が更新されてきた。近年、衛星画像が高解像度化してきたため、今回、衛星画像を用いて植生図の作成を試みた。さらに1985年の植生図と比較して、環境の変化を明らかにした。

2.歴史
南鳥島は1860年台にアメリカの船が発見し、その後1900年頃までに日本人が入植し東京府に編入されている。その後、入植者の撤退や太平洋戦争、敗戦に伴うアメリカによる統治などを経て1968年に日本に返還された。返還後、行政上は小笠原村に所属となったが定住者はおらず、気象庁、海上自衛隊、国土交通省(海上保安庁)が拠点をおいて国境警備や気象観測、低潮線保全などを行っている。

2.南鳥島の位置及び気候条件など
父島から東南東に約1,300km、硫黄島から東に約1,100kmの位置にある孤島である。1辺約2kmの正三角形をしており、面積1.51k㎡、最高標高は9mのサンゴが隆起して形成された島である。気候は年間平均気温25.6℃、年間の降水量は1053.6mm、年平均湿度は76%(いずれも2018年1月時点の平年値)であり、熱帯気候と亜熱帯気候の推移帯の海洋性気候である。

3.使用した衛生画像と植生判読
使用した衛星画像はWorldView-2(2016年撮影)およびGeoSpece衛星画像(2014年撮影)である。いずれも解像度は約50cm程度であるが、色調や形状などから樹木と草本の判別は用意である。凡例については、1975年国土地理院撮影の航空写真と奥富・井関(1985)を比較して凡例を類推したものを衛星画像からの判読したものに適用した。南鳥島は孤島であることと、歴史的経緯などによって植生を構成種が限定されていることから、植生を判読することは比較的容易であった。

4.結果
衛星画像から作成した植生図を図1に示した。これと奥富・井関(1985)を読み取り、デジタル化した植生図を比較した。その結果、モクマオウが面積を拡大しており、モンパノキやトゲミウドノキが面積を縮小していた。全体的に草本主体の植生から木本が多い植生へ変化しており、植生遷移が推移していると考えられた。
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