主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2019年度日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2019/09/21 - 2019/09/23
小学校児童への熱中症対策の一つとして,教室へのクーラーの設置があげられる.長野市では近年の気候変動やヒートアイランドにより気温が上昇していることから,児童の学習環境の改善を目的に市内の小中学校普通教室へのクーラー導入に向け,その優先順位を検討するため2018年に長野市立の全小学校における夏季の教室内温度の測定を行った.本研究では,この教室内温度のデータと百葉箱で測定された外気温のデータを用いて,長野市内における小学校の教室内温度の空間分布の特徴について報告する.
長野市立小学校54校において,各学校の1教室に温湿度計(Onset社製:UX100-003)を設置し,30分間隔で教室内の温湿度の観測を行った.温湿度計は教室内廊下側の中央の壁(柱)で,床面から約1.5〜2mの位置に取り付けた.また,各学校の百葉箱内に温度計(T&D社製:おんどとりRTR-502L)を設置し,10分間隔で外気温の観測を行った.すべての温湿度計および温度計の器差補正を行ってある.解析対象期間は2018年7月および8月である.
教室内温度の空間分布をみると,教室内温度は長野盆地内の学校で高く,盆地外の中山間地など標高の高い学校で低い傾向にあった.また,盆地内でも,犀川より北の長野駅周辺からその東側にかけての地域,篠ノ井や松代付近の地域で特に温度が高かった.この分布傾向は百葉箱内で測定された外気温の分布とよく似ている.
教室内と外気温の関係は直線的であることから,教室内温度はおおむね外気温に影響を受けていると考えられる.しかし,盆地内の学校ではばらつきもみられ,この要因として校舎の構造,周囲の土地利用などの影響が考えられた.