日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 408
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発表要旨
「今昔マップ旧版地形図配信・閲覧サービス」における収録地域および機能の拡張
*谷 謙二
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抄録

1.はじめに

 旧版地形図をWebサイト上で配信・閲覧する「今昔マップ旧版地形図配信・閲覧サービス」は,2005年にWindowsソフトとして開発を開始し,2009年にインターネットダウンロード,2013年にWebサイトとして開発を継続している(谷 2005,2009,2017)。2022年から実施の高校の必履修科目「地理総合」においては,防災などの単元で新旧地形図の読み取りが地理的技能として位置づけられており,これまで以上に旧版地形図が活用されることが想定される。そこで,今昔マップでは,従来の大都市地域だけでなく,収録範囲を47都道府県の県庁所在地まで広げるとともに,機能面でも改良を行っている。

2.データセットの追加と利用状況

 今昔マップは当初は首都圏のみだったが,3大都市圏,政令指定都市と範囲を拡大し,2019年6月の津と山口の公開により,全県庁所在地を網羅し,現在37地域の地形図3,759枚が収録されている。収録範囲の拡大にともない,2014年には1000件/日程度だった「今昔マップ on the web」のアクセス数は,2018年以降は6000件/日を超えるようになっている。

3.システム面での改良

 「今昔マップ 旧版地形図配信・閲覧システム」は,地図タイルを配信するタイルマップサービス,WindowsPCにインストールして使用するデスクトップソフト「今昔マップ3」,Web上で閲覧する「今昔マップ on the web」から構成される。このうち「今昔マップ3」は大きく変化していない。

 タイルマップサービスについては,限られたサーバ容量の中でデータセットを追加するため,ファイル容量の削減に努めた。まず,従来256色(8ビット)で保存していたカラー地形図画像を,16色(4ビット)に減色した。これにより,カラー画像の場合はファイルサイズが半分近くまで減少した。また,海域が広い図面は,細かな青色ドットのためファイルサイズが大きくなっていたため,海部を白抜きにして加工し,ファイルサイズを縮小した。さらに,当初は独自に色別標高地図タイル画像を作成しており,重ねられるようになっていたが,地理院地図の色別標高図を使用することにして独自の標高タイル画像は削除した。サーバのデータ容量の削減により,データセットの追加が可能となった。

 「今昔マップ on the web」については,状況の変化に伴いシステムを大きく変更した。まず2016年には,スマートフォン等で位置情報を使用するためSSLで呼び出せるようにした。さらに,公開開始時にはGoogle Maps APIを利用したシステムだったが,2018年に無償使用の範囲が縮小したため,オープンソースWeb地図ライブラリ「Leaflet」を使用することにし,JavaScriptのプログラムを全面的に書き換えた。それまではデフォルトでGoogleマップが右側に並べて表示されていたが,Leafletになってからは地理院地図がデフォルトとなった。しかし,Googleマップで利用できるストリートビューは古い街道の現状を見る際などで有用なため,右クリックで当該地点のGoogleマップにリンクするメニューを作成した。Googleマップだけでなく,YAHOO!地図やMapion等の地図サービスにもリンクしている。また,Leafletに変更した際に,それまでの1画面または2画面表示に加え,4画面に分割して表示できるようにした。

 昭和戦前期の一部地形図では,軍関係施設などが消されるなどのいわゆる戦時改描が行われている。戦時改描図は,図郭外の定価欄が( )で括られているとされており,今昔マップ収録地図においてもそうした図面が51枚含まれる。戦時改描図は,知らない人が見ると改描を信じてしまう可能性がある。そこで今昔マップでは,定価欄が( )で括られている図面の上にカーソルがある場合は,図幅情報として地図上に注記することとした。具体的に地図上で改描されている箇所はわからないものの,改描の可能性を注意喚起することはできめるだろう。

文 献

谷 謙二 2005. 時系列地形図閲覧ソフト『今昔マップ』(首都圏編)の開発.埼玉大学教育学部地理学研究報:25,31-43.

谷 謙二 2009.時系列地形図閲覧ソフト『今昔マップ2』(首都圏編・中京圏編・京阪神圏編)の開発 .GIS-理論と応用:17(2),1-10.

谷 謙二 2017.「今昔マップ旧版地形図タイル画像配信・閲覧サービス」の開発.GIS-理論と応用:25(1),1-10.

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