日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 227
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発表要旨
新潟県羽越豪雨(1967.8.28)による土砂移動と災害伝承碑の実態
*生沼 洋祐下河 敏彦藤平 秀一郎小林 浩
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抄録

平成 30 年 7 月に発生した西日本豪雨災害では、明治時代に水害碑が設置された地域で人的被害が発生したことが注目された。また、国土地理院は、新たな地図記号として「自然災害伝承碑」を制定するなど、近年自然災害の実態を後世に伝える重要性が注目されている。

小山他(2017)は、津波災害や火山災害については石碑の存在や研究事例は多いが、水害・土砂災害に関する石碑に着目した研究は限られているとして、広島県内の土石流及び石碑の詳細な調査と地域防災・防災教育上の意義を見出している。

しかし、これらの先行研究の対象地域は、周辺地域で十数年に 1 回の頻度で豪雨が発生する地域である。一方、羽越災害は新潟県内で 134 名もの犠牲者を出す大災害であったが、羽越災害以前の大規模災害の記録は、1757 年(宝歴 7 年)まで遡る。

このように、豪雨の発生頻度の低い地域で石碑・神社や災害痕跡の調査事例は少ない。そこで、本研究では羽越災害の土砂移動実態を明らかにするため、5mメッシュデータから作成した2m等高線図を基図として、災害直後の空中写真(1967年9月林野庁撮影)判読、堆積物調査、ヒアリングにより、土石流や洪水氾濫域範囲を記載した。石碑や神社については、現地調査及び市町村史(誌)を中心に起源を調査し、地形的位置を考察した。調査地域は、阿賀野川市石間川、都辺田観音、湯沢温泉、下荒沢である。

羽越災害の土砂移動実態と石碑との位置関係を調査した結果、いずれも風化し目立たない状況にある。看板も設置されておらず、現時点で国土地理院の自然災害伝承碑としての登録もない。石碑は自然災害を伝承する効果はあるが、点情報であるため、過去の土砂災害の実態を面的に示すためにもGISデータとして整備し、Google Earthといった実際の画像と重ねあわせるなど、分かりやすい情報として整備する必要もある。

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