日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P107
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発表要旨
仙岩火山地域における山岳湿地の成立年代と立地環境
*佐々木 夏来須貝 俊彦
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キーワード: 湿地, 積雪, 涵養水, 第四紀火山
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抄録

八幡平から岩手山にかけての仙岩火山地域には,緩傾斜な火山原面上や地すべり地に湿地が多数分布しし,火山原面上の湿地は,噴火口のほかに,南北に延びる稜線の東側にできた雪の吹き溜まりや,稜線沿いの鞍部などの斜面から涵養水が供給される平坦地に形成されている.このことは,湿地の立地によって涵養源が異なることを示唆するだけでなく,気候変動への応答性や湿地の成立年代の違いにも関係する可能性がある.本研究では,火山原面上の雪の吹き溜まりに形成された湿地(雪田型湿地)と稜線沿いの平坦な鞍部に形成された湿地(平坦地型湿地)を対象として掘削調査を実施し,湿地の成立時期と気候変動および地形変化との関係を明らかにすることを目的とした.雪田型には三ツ沼の東側斜面の湿地(39.859N, 140.891E; 1398 m)と源太ヶ岳東斜面の湿地(39.884N, 140.897E; 1399 m),平坦地型には三石湿原(39.847N, 140.891E; 1283 m)と三ツ沼(39.858N, 140.904E; 1389 m)を選定し、ハンドオーガを用いて湿地堆積物を採取するとともに、堆積物の色相計測,テフラの観察と火山ガラスの元素分析,泥炭層基底部の放射性炭素年代測定を実施した.

雪田型である三ツ沼東湿地と源太ヶ岳東湿地は全体が湿性草本の覆われる湿原である.堆積物は,両者共に湿地堆積物の下位に埋没有機質土層を有し,上位に向けて有機質層から泥炭層へと変化していた.泥炭層中に,それぞれ4枚と5枚のテフラ層が挟在し,MNE-1とGE-2は十和田aテフラと対比できた.一方,平坦地型の三石湿原と三ツ沼は,中央部に水域が残存する湿地である.堆積物は,基本的に上位に向けて有機質シルト層,分解度の高い泥炭層,未分解の泥炭層と続くが,三石湿原では未分解泥炭層の下位に湖沼堆積物と考えられる有機質シルト層が厚く堆積し,MI-1の軽石は泥炭層中に散在していた.それぞれ2枚のテフラ層が確認され,MI-1とMN-1は十和田aテフラと対比できた.泥炭層基底部の放射性炭素年代測定の結果,平坦地型湿地の方が雪田型湿地よりも形成時期が古い傾向があった.雪田型湿地の形成時期は気候温暖期に該当し,三ツ沼東湿地の埋没土層の堆積時期は,ヒプシサーマル期の日本海側における多雪化時期に一致した.このように雪田型湿地の形成は,数百年から数千年スケールの気候変動に応答していたと考えられる.一方で,平坦地型湿地は,積雪は少ないものの周辺斜面からの涵養で水分豊富である.気候変動との関係はあまり顕著ではなく,集水域のより広い三石湿原ほど形成年代が古かった.湿地の気候応答性を検討するには,立地環境も考慮に入れる必要がある。

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