日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P110
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発表要旨
2010年代以降の市街地再開発事業の実施展開
*小原 丈明
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抄録

Ⅰ.はじめに

 本研究は,日本各地の市街地再開発事業の実施展開を分析することで,各年代,とりわけ2010年代以降の都市再開発の特徴を明らかにすることを目的とする。具体的には,各年代における同事業の主体や目的,権利者,事業期間,事業費,初動期の対応,実施上の障害・問題点,社会経済情勢の影響などに着目する。

Ⅱ.研究資料・方法

 本研究では,『日本の都市再開発』第1巻〜第8巻(全国市街地再開発協会編集・発行)に掲載された894地区(2017年7月時点)についてデータベースを構築し,上記項目について分析を行った。また,適宜,国土交通省の資料や個別調査のデータも使用している。

Ⅲ.分析・考察

 1969年に制度化された市街地再開発事業は1990年代後半から

2000年代半ばにかけて実施地区数を増やしてきたが,2010年代は減少傾向にある(図1)。これは,バブル経済期に計画され,バブル経済崩壊の影響によりなかなか進展のみられなかった都市再開発の多くがようやく前者の時期に事業化し完了したのに対し,バブル経済崩壊以降は都市再開発の計画自体が減少してきたことを反映している。それゆえ,前者の時期に完了した地区の事業期間は長期化する傾向にあったのに対し,後者の時期の地区は比較的に短期間で完了していた。また,バブル経済崩壊以降の市街地再開発事業は首都圏を中心に3大都市圏に集中する傾向にある。

 都市再開発では一般的に合意形成段階や権利変換・立ち退き段階で多くのトラブルが発生するが,バブル経済崩壊以降ではそれらの段階だけでなく,核店舗の誘致や保留床の処分の段階でも多くのトラブルが発生する傾向にあった。そのようなトラブルが発生した地区では事業を継続するために,事業内容の変更(開発規模の縮小,商業系用途から住宅系用途への変更)だけでなく,デベロッパーや開発主体の変更も確認された。

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