日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 908
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発表要旨
バーバラ・ペチュニク子供地図作品展とICA地図と子供コミッション
*大西 宏治
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抄録

1. バーバラ・ペチュニク子供地図作品展とは

 バーバラ・ペチュニク子供地図作品展とは、ICA元副会長バーバラ・ペチュニク氏を記念して行われる作品展である。彼女は子どもの地図表現や地図の啓蒙活動に熱心に取り組んだ。地図作品展の主催はICAであるが、運営はICAのコミッションのCartography and Childrenに委託されている。特に出展される地図の審査は審査委員会を別に組織して行われる。

 この地図作品展はICC大会において実施されるため、2年ごとの開催となる。大会ごとにテーマが設定されるが、ここ数回は”We love maps”がテーマである。地図作品といっても、日本で行われている全国児童地図作品展で出展されるような客観的な地域調査の結果などをまとめた地図が応募されるものではない。A3サイズまでの大きさに、テーマを踏まえて、地球全球もしくは世界の大陸の大部分が含まれる地図を描いた作品を応募することになっている。地図上にはできる限り言葉を使わずにWe love mapsを表すこととされている。ICC2019大会において一般投票で表彰された作品を見ると、日本で一般的に地図作品といわれているものと地図といわれているものとしてかなり異なるものが出展されていることがわかる(図1)。

2. 子ども地図展の審査カテゴリ

 各国・地域から出展できる子どもの地図作品は最大で6作品であり、33カ国から合計で188枚の地図作品が出展された。出展された地図は6歳未満、6〜8歳、9〜12歳、13〜15歳の年齢カテゴリに分けられて審査される。それぞれのカテゴリに1〜3位の賞が用意される。他にも会場での投票による一パンツ票賞やCreativity award、Special Mentionの3賞も用意されている。今回の作品展では6歳未満が14作品、6〜8歳が29作品、9〜12歳が82作品、13〜15歳が63作品の出展となった。

 デザイン性のある地図や創作的な作品に地図を用いるため、社会科や地図学習の延長線上にある地図とは様相が異なる。そのため、日本からの応募は少なく、国内予選も不活発な状態である。

3. 地図と子供のコミッション

 このコミッションは学校教育への地図活用、地理情報の視覚化、学校へのGISの普及などに取り組み、ICC2019でも3つのセッションを開催した。セッションの中身は地図教育や教授法がほとんどであった。ただ、地図概念の国や文化による差異や学校地図の普及など、ついても活発な議論が行われた。

4.日本の地図教育の課題

 地図教育は、地理教育の柱ではあるが、日本では地理教育の一部である。地理教育のみではカバーできない、地図表現、視覚化などの課題がICCでは積極的に取り上げられている。視覚表現の一部としての地図という概念を日本の地図教育の中で醸成し、さまざまな教科や分野と連携する必要性を感じた。

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