日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 819
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発表要旨
ブナ林土壌の保水機能の定量的評価
*大貫 靖浩小野 賢二安田 幸生
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抄録

森林の持つ多面的機能の中に、森林土壌の保水機能(水源涵養機能)がある。保水機能は以下の2つに大きく分けられる。1つ目は雨水を土壌中に保持する能力で、土壌に空いている隙間の割合(空隙率)や土壌の水分率を測定すれば算出できる。2つ目は土壌中に水を貯えることが可能な容積で、土壌の空隙率と土壌の厚さを測定すれば算出可能である。イメージ的には、前者は通常時に使える土壌中の水の「貯金」、後者はもしも(大雨)の時に水を容れることのできる「保険」に例えることができる。演者らは、岩手県北部の安比高原ブナ二次林に調査地を設定し、「貯金」の指標と考えられる土壌含水率と、「保険」の主要因子である表層土層厚(土壌厚)を多点で測定し、一部で土壌断面調査を実施して土壌の透水性と保水性を測定して、両機能の定量化を試みた。測定の結果、平常時の土壌の保水機能という観点からみると、安比のブナ林の土壌は最表層を除けば水を保持しやすいと言えた。一方、水を容れられる容量としては、大雨の際に雨水を地下に浸透させやすいものの、全体的には土壌が薄く貯水可能量は大きくないと推察された。つまり、土壌中の水の「貯金」は十分だが、もしもの時の「保険」はそれほど大きくない。ただし、一部に分布する厚い土壌層の部分が、大雨の際には洪水を抑止する効果を担っていると考えられる。

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