日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 118
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発表要旨
三陸海岸における後期更新世から完新世の地殻変動の再検討
*丹羽 雄一石村 大輔
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抄録

東北地方太平洋岸に位置する三陸海岸では,2011年に発生した東北地方太平洋沖地震(以降,2011年地震)時の沈降(Ozawa et al., 2011)および,2011年地震以前の数10〜100年間における沈降傾向が観測されている(Kato, 1983)。当該地域では海岸沿いに分布する平坦面を更新世海成段丘と解釈することで,三陸海岸全域にわたる105年スケールの隆起傾向が示唆されてきたが,平坦面の形成過程や分布に関しては,1980年代以降,2011年地震時まで,十分な検証が行われていなかった。さらに,測地観測記録と更新世段丘の中間的時間スケールである完新世の地殻変動も2011年地震発生まで不明であった。

このような状況にも関わらず,更新世海成段丘と解釈されてきた平坦面の存在に基づく,105年スケールの隆起傾向が,日本海溝で発生する超巨大地震の繰り返しと地殻変動を説明するモデルの大きな制約となっている(池田ほか,2012)。今後の日本海溝で起こりうる地震・津波の予測を考えるためには,上述の超巨大地震繰り返しモデルの制約条件の妥当性を再検討する必要がある。本発表では,発表者らが2011年地震以降に三陸海岸で実施した地形・地質研究を中心に紹介し,三陸海岸の新たな地殻変動像を述べる。

文献:池田ほか(2012) 地質学雑誌,118,294-312. Kato (1983) Tectonophysics, 97, 183-200. Ozawa et al. (2011) Nature, 475, 373-377.

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