日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 107
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発表要旨
狭山丘陵の水環境に関する水文地理学的研究
—河川源流域の汚染源を中心に(3)−
*乙幡 正喜小寺 浩二
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抄録

Ⅰ はじめに

新河岸川流域は、かつて水質悪化が顕著な地域であったが、近年は流域下水道や親水事業で水質が改善しつつある。しかし、狭山丘陵に位置する支流の上流部においては依然水質が改善していない地域も存在している。2017年11月から2年間にわたる狭山丘陵周辺の河川調査結果を基に、汚染源の特定について2020年12月より追加調査を実施し、水質を中心とした水環境の特徴を考察する。

Ⅱ 対象地域

 狭山丘陵周辺で水質が悪化している河川を調査対象とした。追加調査地点は、柳瀬川水系の不老川上流部、六ッ家川上流部、黒目川中流域と目黒川と空堀川中流域の4ヶ所である。

Ⅲ 研究方法

例月調査として汚染源の特定のため2020年12月より毎月12地点の調査を実施している。現地では、水温、気温、電気伝導度(EC)、COD、pH及びRpHを計測し採水して自宅で簡易濾過及びメンブラン濾過を行い、研究室にてイオンクロマトグラフを使用し、主要溶存成分の分析を行う予定である。

Ⅳ 結果・考察

EC推移図(図2)では、柳瀬川水系の六ッ家川上流部(M2)と不老川(F2)で平均799μS/cmと 641μS/cm以上の高い数値を示している。六ッ家川上流の北野一般廃棄物最終処分場放流口(M1)では、流出水のECは2020年12月が1732μS/cm、2021年2月のECは588μS/cmであった。2021年6月のECは1393μS/cmであった。この地点の2月と6月を比較するとECは2.4倍になっている。黒目川の降馬橋 (KR1)のEC平均値は215μS/cmと低い数値である。ここから100m下流の清涼飲料水工場排水放流口(KR2)のECは12月2503μS/cmと非常に高い数値を示していたが、2月は1467μS/cmとなり数値が約半分となっている。しかし、6月のECは2578μS/cmと再び上昇している。下流のよしきり橋(KR3)では588μS/cmと希釈されている。砂川堀では、東永橋(S2)で12月は1320μS/cmに高い数値を示していたが2月は484μS/cmと1/3に下がっている。しかし6月のECは2354μS/cmと急上昇し、薄茶色の水が流れていた。

pHは、空堀川の東芝中橋(K1)で2020年12月は8.4、2021年2月は8.3であった。2021年6月も8.4であった。下流の浄水橋(K2)は12月のphは9.0、2月は9.0であり、6月も9.2であった。両地点とも高い数値を示し変化はなかった。黒目川の清涼飲料水工場排水放流口(KR2)の12月のpHは8.6、2月は7.6であり6月も8.6であった。2月は数値が下がっている。

東芝中橋の6月の採水温は6月30.3℃と高い数値を示している。東芝中橋(K1)の脇に放流口があり、市内にある乳製品製造工場の排水である。この排水は、環境基準を満たしているとのことである。

Ⅴ おわりに

六ッ家川上流では一般廃棄物最終処分場の水質がECに影響し、空堀川では中流域でEC,pHが乳製品工場排水の影響で負荷が高まっている。また、黒目川の中流域でも清涼飲料工場の排水の影響でEC, CODが高い数値を示している。継続調査を行い、主要溶存成分の分析結果を研究に反映させたい。 

参 考 文 献

森木良太・小寺浩二(2009):大都市近郊の河川環境変化と水循環保全—新河岸川流域を事例として—. 水文地理学研究

報告, 13, 1-12.

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