日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P019
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発表要旨
関東平野中央部における最終間氷期海成層の高度分布
*宮本 樹須貝 俊彦丹羽 雄一中西 利典小松 哲也日浦 祐樹
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抄録

関東平野は第四紀後期の地形発達研究が日本で最も進んでいる構造盆地の一つであるが,北部の猿島台地〜宝木台地にかけては地殻変動の傾向が解明されていない.貝塚(1987)では,下末吉面の高度分布を用いて造盆地運動を論じている.しかし,大宮台地や猿島台地北部,下総台地北西部では荒川や利根川・鬼怒川などの河川による陸成の大宮層(中澤・遠藤,2002)と風成堆積物が厚く堆積しているため,正確な地殻変動量は議論できない.本発表では,貝化石含有層の上面高度を用いて構造運動を検討した.

ジオ・ステーション(防災科研),埼玉県国際環境科学センターで公開されているボーリング柱状図および東北新幹線建設時掘削されたボーリングの柱状図から最終間氷期に堆積したと考えられる貝化石含有層の上面高度を収集し,地図上にプロットした(図1).

プロット図は,貝殻片含有層の高度分布を深度別に色分けして示した図であり,貝殻片含有層のマトリックスが砂層であるものを用いて作成した.砂とシルトが混じっている層準に関しては,記載において優勢である方(例:シルト混じり砂層は砂層)をとった.宝木台地・猿島台地・筑波稲敷台地周辺では,デルタが発達していた(宮本ほか,2020;池田ほか,1982)ことから,貝殻片含有砂層の上面高度は,デルタの頂置面の高度,すなわち,高海水準期の海面高度を示すと考えてよい.

貝殻片含有層高度は埼玉県久喜市周辺が最深であり,宝木台地や筑波稲敷台地,大宮台地方面へ深度が浅くなる.これは貝塚(1987)で示されている下末吉面等高度線図と変化傾向パターンが一致している.しかし,プロット図で示す等高度線の高度が約20〜30m低くなっている.これは,貝塚(1987)では地形面の高度分布を用いているのに対し,プロット図では貝含有層の高度を用いていることに起因する.最終間氷期以降河川の延長による大宮層や常総粘土,加えて,火山灰などの風成堆積物が厚く覆っていることから,高度差が生じたものと考えられる.

謝辞:本報告には,経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成30〜31年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部を用いた.

引用文献:池田ほか1982筑波の環境研究6, 150-156. ; 貝塚1987地学雑誌96, 51-68.;宮本ほか2020地理学会要旨;中澤・遠藤2002地域地質研究報告41

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