主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2022年度日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2022/09/23 - 2022/09/25
1. はじめに 北海道東部の平野部には,構造土の一種である十勝坊主(アースハンモック)の分布が知られている。本研究では,十勝平野を代表する分布地である帯広空港のハンモックの形態的特徴を明らかにするために,ハンモックの高さ,長軸,短軸の長さ,長軸方位を計測した。またこれらの計測値と分布範囲の標高との関係を検討した結果を報告する。 2. 調査の概要 調査地は段丘面上の平坦地(標高145m)で,帯広空港滑走路の西側に位置し,農地と滑走路に挟まれた森林の中にハンモックが密集している。調査は,帯広市など十勝地域の市民15名の協力を得て実施した。調査は東西方向に設置した長さ100mの側線3本に沿って行い,ハンモックの長軸,短軸,高さ,長軸方位を計測した。高さは,ハンモック頂部から長軸・短軸それぞれの前後方向に位置するハンモック周縁部までの高さ(合計4箇所)を計測し,その平均値とした。ハンモックの位置データは,DGPSによるRTK測量によって取得した。同時に,ハンモック間低地の標高を測定した。最終的に合計233個のハンモックの形状データを得た。解析では,分布図上に10×10mのコドラートを作成して集計に用いた(図1)。 3. 結果および考察 ハンモックのほとんどは楕円形だが,癒着した一部のハンモックは長円形を呈する。形態の平均値として直径2.05m(長軸と短軸の合計から計算),高さ0.38mを得た。長軸と短軸の比の平均は1.30であった。側線の中心部は両端部と比べて約1m低くなっており,この凹地にあるハンモックの高さは平均0.39mであったが,両端付近では平均0.24mであった。湿った凹地においてハンモックが大きく成長した結果,地形による形態の差異が生じたと考えられる。 長軸方位は南南東-北北西に集中していた。ハンモックの長軸方位が南北方向へ集中する傾向は南アフリカの季節凍土帯でも報告されており(Grab,2005),凍上量の南北差がその要因となり得ることが指摘されている。本調査地で得られている高精度DEMではハンモックの南向き斜面で傾斜が緩い傾向があり,斜面方位による凍上量の差異が南北に長い楕円形の形状と関連している可能性が考えられる。 引用文献 Grab,S.W. 2005. Earth hummocks (thúfur): new insights to their thermal characteristics and development in eastern Lesotho, southern Africa, Earth Surf. Process. Landf. 30: 541-555.