日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 517
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発表要旨
ごみ集積所の分布とその管理
*元木 理寿
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抄録

1.はじめに かつて,元木(2009)はごみが出るという認識を地域の人たちと共有し,これからの生活環境のあり方を考えていくための,基礎になるような研究や調査こそが求められているのではないかとした。また,ごみ集積所の分布と立地環境に着目し,実態調査を行ってきた。他方,廃棄物減量化,分別収集が進む中で,ごみ集積所の管理に関しては,地域コミュニティ衰退,高齢化に伴い多くの課題が顕在化しつつある。そこで,本研究では茨城県水戸市を事例として,ごみ集積所の分布と立地環境に着目し,その管理実態を把握することを目的とした。

2.水戸市の家庭ごみ集積所の概要 水戸市ごみ集積所設置要項(水戸市,1994)によれば,家庭ごみの収集を行う場所(以下「ごみ集積所」とする。)の利用については,ごみ集積所1ヵ所当たりの利用世帯数は,概ね10世帯としている。その設置場所に関しては,①歩行者及び収集作業の安全が確保できること,②収集車が容易に転回又は通り抜けができる道路に面すること,③利用者及び近隣者の同意があること,④土地所有者の承諾があること,としている。また,その面積,枠,構造物等の設置に関しても概ね設置基準を設けている。

3.ごみ集積所の運用とごみ集積所の立地環境  ①水戸市内のごみ集積所は,13,026ヵ所である(2021年3月31日現在)。その中で水戸市内のごみ集積所の運用は,水戸市生活環境部清掃事務所によれば,地区の都合や細かな都合により10世帯以下での利用を認める場合もあるとされる。近年,高齢者や独り身世帯から自宅から離れたごみ集積所に家庭ごみを運ぶことに課題を抱えており,自宅近くに集積所を設置して欲しいとの意見も増えている事が明らかになった。 マンションについては,新設の場合それぞれの敷地内にごみ集積所に置かれることが多いが,建設確認の際,事前協議が必要となり,建設予定地周辺の自治会と不動産業者が水戸市生活環境部清掃事務所にて協議が持たれることもある。公営住宅の場合,管轄担当者が水戸市の担当者,県営住宅の場合は県開発公社,市営住宅の場合は住宅課,とそれぞれ立地に関する事前協議を行っている。 ②今回,事前に双葉台地区,赤塚駅周辺,堀町周辺にてごみ集積所にかかる景観観察を行った。 例えば,ごみ集積所の立地環境をみると,主要道路の歩道付近と,生活道路で路地の狭い箇所に点在するごみ集積所では,立地に関して違いが確認できた。主要道路に面している場合,歩道に面した緑地の部分に設置されており, 住地側に寄せて設置されるといった例は確認できなかった。それに対して,生活道路や道幅の狭い道路に面している場合,個人の住宅の壁や側溝に設置する場合が比較的多く確認された。こうした集積所は,道幅の狭さや空間の確保ができない場所において確認された。また,公園などが近くにある場合,その公園の敷地外,公園脇に設置されることが多かった。一方,郊外において宅地と宅地の間が広い場合や農地がある場合には住宅地から離れた場所に立地することが確認された。

4.おわりに  ごみ集積所の立地環境に焦点を当て,観察した結果,立地にはごみ集積所周辺の環境に対応した地域的傾向がある事が確認できた。しかし,その立地環境や経緯,土地利用については不明な点も多い。今後はごみ集積所の管理ついて検討を進めたい。

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