地理的見方・考え方は、地理として事象をみる観点であり、地誌を学習するうえでも必要な観点を提供する。具体的には、位置・分布、場所、人間と自然環境との相互依存作用、空間的相互依存作用、地域の5つの観点が地理的見方・考え方となろう。この地理的見方・考え方は、地理における系統学習であっても地誌学習でもあっても共通する観点である。地誌学習というと日本および世界の地理的知識を習得するものと思われがちだが、地誌学習においても地理的見方・考え方は基盤となる観点である。
地誌は、自然、人口、産業、文化などからその地域の地域的特性を明らかにしようとする。地理的見方・考え方は、それぞれの自然や人口、産業、文化などを分析、考察する際の観点を提示するものであり、むしろ地誌学習を構成するものの一つといよう。 地理的見方・考え方は、位置・分布、場所、人間と自然環境との相互依存関係、空間的相互依存作用、地域といった5つの観点からなるが、これらの観点は、地誌を分析する際の観点でもある。ある地域の特性を見出そうとする際には、まずは、その地域がどこにあり、その地域のある地理的事象はどのように分布しているのかを把握する。例えば、人口に着目すれば、その地域の人口分布をみることにより、なぜ人口が集中したり過疎化したりしているのか追究する糸口となる。さらには、自然環境といった自然的特性および産業、文化などの人文的特性からその場所の特性を明らかにしようとする。また、その地域の自然環境と人間の活動とのかかわり、その地域と他地域との交流などからその地域の特性を明らかにしようとするだろう。加えて、その地域がどのように変化してきたのかを追究しながら、その地域の特性を明らかにしようとする。こうした観点は、地理的な見方・考え方であり、そこで明らかにしようとしているのは、その地域の特性である。すなわち、それは地誌にほかならない。す なわち、地誌学習において、地理的見方・考え方は必然的に着目されるものなのである。
地図やGISが、地誌学習の方法あるいは手段として必要不可欠なものであるように、地誌を分析、考察する際の必要不可欠な観点が、上述したように地理的な見方・考え方といえる。すなわち、地誌を学習する際の観点として地理的な見方・考え方があり、その見方・考え方の基盤に地図があり、見方・考え方を深めるGISがあり、それらが相まって地誌学習が深まっていくものと考えられよう(図1)。 地誌は、その地域の知識のみを学ぶものではなく、その地域の地域的特性を見出し、その地域を深く理解するものである。そのためには地理的見方・考え方という観点と地図やGISといった手段が有機的に結びついた地誌学習がもとめられるのである。 地理にとって地誌学習は系統地理学習とともに地理を支える主要なアプローチである。高等学校で必履修化になった「地理総合」は主題学習であるといわれる。主題学習は、地理では地誌学習と系統地理学習を基盤としているもので、さらには主題学習から、さらに専門性を高めるために、バージョアップした地誌学習や系統地理学習へと移っていくのである。