日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P035
会議情報

類型化手法による国勢調査と住民基本台帳の差異の分析
大阪市の年齢階級別小地域単位のデータを基に
*小本 修司
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

Ⅰ 研究内容

 本研究は,国勢調査と住民基本台帳(以下それぞれ,国調と住基)の差異について,大阪市を事例に,小地域(町丁・字等)単位の年齢階級別データを用いて,類型化分析を行う.これを通して両統計の差異には,どのような地域差がみられるのかを明らかにする.国調と住基の差異に関する研究はあまり多くはみられないが,特に両統計の差異について,統計的手法により類型化した研究は管見の限り見当たらない.また本研究は,分析単位として小地域(両統計で呼び方が異なるため,小地域で一本化する)単位に着目するが,この単位での分析もこれまでにされておらず,国調と住基の差異について,より高い解像度での結果が期待できる.

Ⅱ 研究方法

 大阪市の2015年国勢調査小地域データと,同年9月末日の住民基本台帳の町丁目別・各歳別人口データを用いた.また地図化に際しては総務省統計局が政府統計の総合窓口(e-Stat)にてオープンデータとして提供している小地域の境界データを用いた.

 小地域単位という利用できる分析単位の中では事実上最小のものを用いることで解像度の高い分析が期待できる一方で,その分人口が小さい地域が対象となり,結果として秘匿合算処理や,比較するために標準化する際にゼロ除算問題への対応を迫られることは多い.紙面の都合上,詳細な検討は割愛するが,最終的に総人口がゼロとなる地域や,秘匿合算処理の対象となった地域(合算先も含めて)は分析の対象外とした.

 次に国調と住基の差異について,5歳階級ごとに国調人口から住基人口を引いた数値を分析対象とした.また地域間で比較することになるため,本研究では,各地域で国調の総人口と住基の総人口の平均値で除すことで標準化した.

 実際に類型化する際には,ウォード法による階層的クラスター分析を適用した.解釈に際しては,分類結果ごとに5歳階級別小地域別の国調と住基の差異が数値的にどのように分布するか,また分類結果を地図上で可視化することで手掛かりとした.

Ⅲ 結果

 結果として10の類型を抽出した.ここでは分類された地域が少なかった(1~18地域)類型ではなく,主に集約された類型について述べたい.全体の傾向としては,本研究と同様に国調と住基の比較を行った小古間(1991)でも述べられているように,住基の方が多かったという点は押さえておく.

分類結果を地図化したものが図1である.かなり特徴的な空間的分布となったことがわかる.

 類型1は全体の9.8%(178地域)を占め,特に25から44歳代で,国調の方が多い傾向となっている.また大阪市内の中心に分布している点も特徴的である.また国調の年齢不詳が特に多かった.類型2は全体の63.7%(1158地域)を占め,全体の傾向と同様に,どの年代でも住基より国調の方が少なく,また年齢不詳も一定数見られるが,他の類型と比較すると少ない.大阪市の辺縁部に多く分布する点も特徴となる.類型3は全体の24.7%(445地域)を占め,類型1ほどではないが,比較的国調の方が多い.

文献

小古間隆蔵1991. ふたつの人口統計は都市をどうとらえているか-国勢調査人口と住民基本台帳人口からの検討. Sociologica 16(1):9-20

著者関連情報
© 2022 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top