日本地理学会発表要旨集
2023年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 421
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方向別バリオグラムを用いた線状降水帯の長軸・短軸比の抽出
*土屋 日菜松山 洋
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抄録

近年,線状降水帯の発生により洪水や河川の氾濫,土砂災害などが発生し,多くの被害が出ている.気象庁では2021年6月より「顕著な大雨に関する気象情報」の発表を開始した.本研究では発表基準の一つである長軸・短軸比2.5以上という値に着目した.先行研究であるHirockawa et al.(2020,JMSJ)では,3時間積算降水量を用いて80㎜/3hのオーバーラップ率50%の期間と範囲を求め,強雨域を0度から180度まで1度ごと時計回りに回転し,強雨域の長さが最長,最短となる値を抽出し,それぞれ長軸,短軸としている.そこで本研究では,対象事例を平成29年7月九州北部豪雨と,2021・2022年に顕著な大雨に関する気象情報が発表された全30事例とし,地球統計学的手法であるバリオグラムを用いて長軸・短軸比を求めた.その結果,平成29年7月九州北部豪雨に関しては,先行研究では長軸・短軸比3.96だったのに対し,バリオグラムを用いた本研究では2.69となった.また顕著な大雨に関する気象情報の発表があった事例に関しては,長軸・短軸比の平均が2.19となり,2.5を超える値をとる事例は5事例のみという結果となった.長軸・短軸比の値が小さい理由として,対象範囲内の別の雨域によるものだと考えている.今後は対象範囲の更なる検討を行う.

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