日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P068
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三宅島の水環境に関する水文地理学的研究
*松本 達志小寺 浩二
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キーワード: 水環境, 三宅島, 地下水
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抄録

Ⅰ はじめに

三宅島では、有史以来たびたび噴火災害が発生している。20世紀以降では、1940年、1962年、1983年、2000年と約20年の頻度で4回噴火が起きている。最後の噴火から既に20年以上が経過し、現在も山体深部の膨張が続いていることから、三宅島の火山活動は徐々に高まりつつあると考えられる。このような状況にある三宅島において、現在の水環境を把握することは、島の水環境保全、島に暮らす人々の暮らしを守るといった観点からも重要である。本研究では、島内に観測点を設け、各点での観測結果を基にした解析を行うことで現在の三宅島の水文地理学的環境の状況を明らかにし、その要因に関する総合的な考察をすることを試みる。また、本研究室では、2012,13年にも三宅島で調査を行っており、過去データと比較することで、2000年の噴火後から現在に至るまでの水質変化の実態を明らかにすることを目的とする。

Ⅱ 対象地域

調査地域は、東京都三宅村である。周囲を流れる黒潮の影響により温暖多雨な気候で、年間平均気温は、18,0℃、年間平均降水量は3024.7mmとなっておりとなっている。2000年の噴火の影響で、今なお危険区域及び、立入禁止区域が設定されている。 Ⅲ 研究方法

2022年4月から2022年12月までの9か月間において月一回の現地調査を実施した。島内の湖(池)3か所、沢2か所、地下水9か所(このうち水道水源が8か所)、湧水2か所、水道水14か所、雨水3か所、その他として温泉1か所、雨水を利用した水道1か所の計35地点で調査を行った。現地で気温、水温、(温度計とHANNA)、電気伝導度(EC)、pH、RpH、化学的酸素要求量(COD)、流量を計測した。雨水は、三宅島水道係の方の協力のもと、島内3か所の三宅村が管理する配水地にて、2ℓペットボトルの口に漏斗を付け、それを断熱材を詰めたケースに入れた簡易採取装置(法政式)を設置し採水した。

Ⅳ 結果・考察

9回の調査においての、電気伝導度の平均値を全地点で示したところ(第1図)、雨水や北西部の沢、池で比較的低い電気伝導度が低い傾向がみられた一方、南部の大路池付近は、地下水、水道水ともに電気伝導度が高い結果となった。東部の水道水、地下水は比較的ECが南部の大路池付近のものと比較して低いことが明らかになった。また、水道水は島内の公衆トイレ、宿泊先などを中心に14か所で測定を行い、電気伝導度の値に東西で顕著な差が明らかとなった。西部では、水道水としては極めて高い800μs/cmを超える値が多く見られた一方、東部では、400μs/cm付近の値がほとんどだった(第2図)。

Ⅳ おわりに

今後も継続調査を行い、地下水の季節変動や主要溶存成分の分析結果等を研究に反映させたい。

参考文献

濱侃(2014): 伊豆諸島を対象とした火山島の水質特性, 法政大学文学部地理学科卒業論文.

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