日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P045
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低地の地形解析に適した高精度DEMの作成
*吉田 一希
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抄録

1. はじめに

近年、航空レーザ測量の普及により、全国的に高解像度・高精度な標高データ(DEM)が整備されてきている。これらのDEMを用いた地形解析では、宅地化等に伴う人工地形の存在とスケール問題(Iwahashi et al., 2021)により、低地における自然地形の地形量の算出は困難となっている。本研究では、QGISとDEMを用いた地形判読・地形解析により、これらの地形量の算出に適したDEMの作成を試みた。

2. 作成手法

(a) 自然地形DEM 基盤地図情報のレーザ測量によるDEM5Aから詳細な標高段彩図を作成し、主に昭和期以降の人工改変(盛土・切土)による高度の変化がほとんどないと考えられる地点(田畑や、集落内の古い道路など)を判読した。QGISを用いてその地点のポイントデータ(ポイント密度は微地形の存在や傾斜変換点を考慮して加減し、100m2あたり約1~5点)を作成した。属性にDEM5Aの標高値を付与し、ラスタ化処理した後に内挿補間して15mメッシュDEMを作成し、最後に平滑化処理を行った。平滑化にはWhitebox ToolsのBilateralFilterを使用し、パラメータはDistance標準偏差を2、Intensity標準偏差を5とした。

(b) 一般面DEM (a)に平滑化処理を4回行い、低地の一般面(微地形を除いた地形面)を表現したDEMを作成した。平滑化にはBilateralFilterを使用し、パラメータはDistance標準偏差を100、Intensity標準偏差を1とした。大局的な低地の傾斜を算出できるほか、曲率計算により蛇行帯を定量的に抽出できると考えられる。

(c) 微地形DEM (a)から(b)を差分して、微地形を表現したDEMを作成した。微地形の比高等を算出できるほか、自然堤防・浜堤・旧河道等を定量的に抽出できると考えられる。

(d) 人工地形DEM DEM5Aから(a)を差分して、人工地形を表現したDEMを作成した。低地の改変地における盛土の層厚等を算出できる。

引用文献:Iwahashi et al.(2021)PEPS.8(1).

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