日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 343
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人口減少期における小売業の空間分布の変化に関する全国的傾向
*富樫 陸斗磯田 弦中谷 友樹関根 良平
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抄録

1.はじめに

国内の地方都市においては、大型店の郊外進出と中心商業地の衰退が長年問題となってきた。また近年、人口減少によって都市の縮退が進み、居住機能と都市機能を集約させたコンパクトなまちづくりが求められている。本研究は人口減少期において、小売業の都市圏における中心・周辺間の分布の変化を小売業従業者数の分布を用いて観察するとともに、都市圏人口の変化との関連を分析する。

2.方法

全国の大都市雇用圏(MSA)を対象とし、小売業従業者数を2009年,2014年,2021年の経済センサスより得たほか、上記年次の住民基本台帳人口を用いた。都市圏内の中心・周辺を設定するにあたり、都市雇用圏の中心市町村・郊外市町村を用いる定義と、中心市町村かつ用途地域が商業地域である区域(以下、「中心商業地」)を中心、都市雇用圏のそれ以外を周辺とする定義の2種類を用いた。 まず、中心・周辺それぞれの従業者数変化率を算出し、都市圏人口の5段階区分によって色分けして散布図を作成した。その後、人口変化率と従業者数変化率、人口と従業者数の集中化指標(中心部の変化率—周辺部の変化率)で相関を調べた。

3.結果と考察

小売業従業者数は、年次や中心・周辺の定義に関わらずほとんどの都市圏で減少していた。その中でも中心商業地では特に減少幅が大きくなっており、小売業の「中心商業地」への再集中は進んでいないことが明らかになった。都市規模ごとの傾向を見ると、小規模な都市圏ほど中心市町村よりも郊外市町村において顕著な減少がみられたが、それでも「中心商業地」の減少幅は他都市圏のそれを上回っていた。また人口と従業者数の変化率、集中化指標はどちらも正の相関を示したものの、神田ほか(2020)と同様に人口分布が多くの都市で集中化傾向にあるのに対して従業者数は一貫した傾向を示しておらず、居住機能に比べ商業機能の集約は多くの都市で進んでいないことが示唆された。

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